研究課題
本研究は、グローバル化社会における『狩猟採集民』と『農耕民』の現代的な関係性を再検討することを目的としている。2015年度は、国内における文献調査、マレーシアにおける現地調査、調査結果の分析、および国内外の学会における研究成果の発表や情報収集、そして研究結果の執筆を行った。(1)マレーシアにおける現地調査2015年8月にマレーシア・サラワク州で現地調査を実施した。都市部に居住する内陸部出身の、クニャ、カヤン、シハン、プナンなどの複数の民族集団出身者を対象に調査を行った。調査では、都市部における社会関係の築き方について参与観察とインタビューをおこなった。その結果、都市部においても内陸部でみられた社会関係を継続している事例が観察された。一方、若い世代では様々な民族集団と日常的にオープンな関係を形成していることが明らかになった。(2)国内外の学会における研究成果の発表と情報収集、研究ネットワークの構築ボルネオの内陸先住民コミュニティに、フィリピン人やインドネシア人などの外部者が取り込まれるプロセス、そして外部者がコミュニティにもたらす社会的インパクトについて第49回日本文化人類学会で発表した。この学会では、分科会「多元的結合と下からの共生-アジアにおける移民・難民の視点から」を組織し、タイ、日本、アメリカなどさまざまな移民社会を対象とした研究者と事例を比較検討し、議論した。また、第11回国際狩猟採集社会会議では、現代的な状況における狩猟採集民の狩猟活動の位置づけとアイデンティティの関係について研究成果の報告を行った。この会議では、ボルネオで研究をする海外の研究者と研究結果の解釈について有意義な議論を行うことができた。その他、国内で開催された複数の学会や研究会に出席し情報収集を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に沿って、着実に成果を蓄積しつつある。2015年度は、前半は国内における文献調査を中心に行い、夏にはマレーシアにおける現地調査を実施した。文献調査では、ボルネオ社会に関する文献資料、人類学におけるエスニック・アイデンティティ研究の文献を収集し、主として理論面での研究を進めた。現地調査では参与観察を行う上で不可欠なラポールを作ることに努め、複数の民族集団を対象にインタビューをおこなった。その結果、多角的な情報を収集することができた。年度の後半は、調査結果の分析と国内外の学会における研究成果の発表や論文執筆をおこなった。そして1年を通して、研究会などに積極的に参加し、情報収集と研究ネットワークの構築に努めることができた。
今後は、これまでに引き続き、ボルネオ島の複数の都市やマレー半島における参与観察とインタビュー調査を実施する予定である。都市部に暮らす若い世代の間で、どのようにエスニック・アイデンティティの揺らぎがみられるのか、また、都市部で育った子供たち世代が、どのようなエスニック・アイデンティティを形成していくのか、調査を行う予定である。さらに、今年度は比較検討のために、インドネシア、カリマンタンにおける調査も計画している。研究成果は国際的な水準で発信していく予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 備考 (2件)
京都大学白眉センターだより
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西本希呼編「科学で旅する世界-フィールドワークの現場から」株式会社春日
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Geographical Journal
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10.1111/geoj.12152
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http://researchmap.jp/read0132728/