研究課題/領域番号 |
15K21114
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
後藤 慎平 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50747219)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | iPS細胞 / II型肺胞上皮細胞 / 肺線維症 |
研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞からII型肺胞上皮細胞を量産するために重要な誘導効率については、改良を重ねることにより、51.2± 1.2 %にまで改善した。これにより、1.0x106個を超える細胞数の確保が容易になり、網羅的な遺伝子発現解析も増幅なしで可能になった。マイクロアレイでiPS細胞由来のII型肺胞上皮細胞の遺伝子発現を調べたところ、SFTPA, SFTPB, SFTPC, SFTPDすべてが発現しており、その他の遺伝子発現についてもII型肺胞上皮細胞に合致する結果だった。このリストの中にはII型肺胞上皮細胞の新規マーカーともなりえる遺伝子も含まれていると考えられ、今後進めていく蛋白質レベルでの発現評価に期待したいところである。また、II型肺胞上皮細胞の継代にも挑戦し、遺伝子発現パターンを維持しながら長期培養する方法を検討している。レポーター細胞を使用しないヒトiPS細胞由来のII型肺胞上皮細胞の単離方法を確立するため、II型肺胞上皮細胞を抗原とするモノクローナル抗体を開発した。細胞外基質については、コラーゲンゲルを試したが、マトリゲルをベースとした三次元培養法からまだ脱却できていない。無フィーダーでの分化誘導についてはコンディショナルメディウムを検討中である。細胞のストックについては市販の保存液を検討し、凍結融解後の遺伝子発現パターンがちゃんと維持されているか今後検討していく予定である。Hermansky-pudlak症候群の疾患特異的iPS細胞の解析に向けてはHPS1だけでなく、比較的解析のしやすそうなHPS2の異常についてもiPS細胞を樹立し、遺伝子発現をレスキューするためのベクターを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誘導効率が上昇し、長期培養にも取り組んだことで、II型肺胞上皮細胞の回収量を増やすことが可能になった。遺伝性肺線維症の疾患特異的iPS細胞の研究にも応用しやすくなったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
II型肺胞上皮細胞を増やして単離する方法を工夫し、当初の予定通り疾患特異的iPS細胞を用いた遺伝性肺線維症の研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果は全体としておおむね順調に進展しているが、細部では遅れている項目もあった。特にサイトカインなど失活の早い消耗品については使用する時期が近くなったら購入するのが望ましく、年度内の購入が間に合わなかった。また、ヒトiPS細胞からII型肺胞上皮細胞を分化させ、長期培養を行なう期間については3ヶ月以上にわたる時間を要する条件検討も含まれる。このため、海外グループとの開発競争に負けないようにスムーズに研究を推進することが重要である。受託で行なっている核型検査をはじめ、結果が返ってくるのに月単位の時間のかかる検査や到着までに時間のかかる消耗品もある。急ぐ必要があるなどやむをえないものについては、一部を次年度使用にすることで、サンプルの準備期間も含めて研究が半年近く遅れることを回避できると考えた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該研究のための期間全体を通して必要な金額は変わらない。 研究は全体的に順調に経過しているが、当該研究に必要な物品が決して減ったわけではなく、有望なモノクローナル抗体を複数株樹立することができたため、それぞれ性能を評価する必要もでてきた。よって研究が進展することで、必要な作業や消耗品はむしろ増えつつあるというのが現状である。引き続き研究計画に沿って使用を進めていく。
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