研究課題
まず、ヒトiPS細胞からII型肺胞上皮細胞への分化誘導とその量産化についてはH27年度に達成できた分化効率の改善などの成果を元に、三次元共培養の状態で継代を繰り返しながら、長期培養を試みた。SFTPCのGFPレポーター細胞を用いて線維芽細胞との三次元共培養を繰り返すことにより、3ヶ月以上にわたってII型肺胞上皮細胞がサーファクタント遺伝子を発現しながら培養を継続できることが分かった。生存率には改善の余地があるが、凍結保存することもできた。また、II型肺胞上皮細胞の遺伝子発現パターンを維持したまま長期培養できることも分かり、量産化に必要な成果を得た。この技術を用いて、遺伝性肺線維症の疾患モデリングに応用した。遺伝性肺線維症を来たすHermansky-Pudlak症候群(HPS)の疾患特異的iPS細胞の遺伝子機能を回復させるため、まずは遺伝子強制発現による正常なHPS1とHPS2の遺伝子導入を試みたが、安定したiPS細胞株を得ることができなかった。このため、正常なiPS細胞株を利用し、HPS1, HPS2の遺伝子欠損株の樹立も行い疾患モデリングを試みた。また、ゲノム編集技術を活用した遺伝子相同組換えにより遺伝子変異の修復を試みたところ、HPS2については遺伝子発現の正常化したiPS細胞株を得ることが出来た。HPS2の疾患特異的iPS細胞と遺伝子修復後のiPS細胞をそれぞれII型肺胞上皮細胞に分化させ、長期培養を行なって比較したところ、サーファクタントを貯留するラメラ体の異常が遺伝子修復によって改善すること分かり、HPS関連肺線維症の発症の初期変化を再現できた可能性がある。本研究課題により、ヒトiPS細胞からII型肺胞上皮細胞への効率の良い分化と長期培養によって量産化への道が開かれたと同時に、ヒトiPS細胞を用いた遺伝性肺線維症のモデリングに道筋をつけることが出来た。
すべて 2016
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)