研究課題/領域番号 |
15K21117
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡辺 文太 京都大学, 化学研究所, 助教 (10544637)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | γ-グルタミルトランスペプチダーゼ / 酵素阻害剤 / 分子プローブ / 抗体依存性細胞傷害 |
研究実績の概要 |
γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)の過剰発現は、心臓疾患やパーキンソン病、糖尿病といった様々な疾患に関与している。中でも、本来GGTを持たない卵巣や肺、膵臓の細胞が癌化することでGGTを高発現し、細胞増殖や転移活性を活発化させ、抗癌剤や放射線に対する耐性を獲得して治療を困難にしていると考えられている。 我々はこれまでに、ホスホン酸ジエステル型GGT阻害剤(GGsTop)を開発している。GGsTopはヒトGGTの活性残基であるスレオニン381と共有結合することで、GGTを特異的かつ不可逆的に失活させる。 本研究の最終目的は、GGsTopをリードとし、その分子上に様々なハプテンをリンカーを介して結合した、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を引き起こすことのできる分子プローブの開発である。ADCCとは、標的細胞を抗体でラベルし、免疫細胞による攻撃を誘導する手法である。ADCCを引き起こすためには、GGTおよび抗体の両方と結合することのできる分子プローブの開発が必須であり、GGsTopのGGT阻害活性を保持したまま分子内にハプテンを導入する必要がある。 今年度の研究では、GGsTopのハプテン導入可能位置を明らかにすることを目的とし、これまでに得られたホスホン酸ジエステル型GGT阻害剤の構造活性相関情報に基づき、GGsTopのメチルエステル部位にポリオキシエチレン型のリンカーを介してハプテンを導入した分子プローブの分子設計および合成を行った。GGTを用いた酵素試験の結果、合成した分子プローブのGGT阻害活性はほぼ消失したことから、GGsTopのメチルエステル部分はハプテン導入部位として不適切であることを明らかとした。今後は、GGsTopのメチルエステル部分以外の部位にハプテンを導入し、GGT阻害活性を保持した分子プローブの開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標とする分子プローブの骨格構築法を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
GGsTopのメチルエステル部分以外の部位にハプテンを導入し、GGT阻害活性を保持した分子プローブの開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付決定額の都合上、初年度に購入予定であったFT-IR(予定額1,900千円)の購入を断念せざるを得なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は化学合成実験をさらに進めるとともに、合成した分子プローブを用いた生化学的実験を実施する予定である。
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