研究課題/領域番号 |
15K21118
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
夏川 浩明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90712951)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 原子磁気センサ / 脳磁図 / 脳波 / 統合解析 |
研究実績の概要 |
本研究ではヒトの脳機構機序の解明のために、光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)による脳磁図(MEG)計測と脳波計測(EEG)の同時計測を可能とするマルチモダリティ脳神経活動計測環境を構築し、両モダリティのデータを統合的に解析する手法を開発することで、より簡便で高精度な脳神経活動計測の実現を目指している。まずH27年度の実績としては、単チャネルOPAMでMEG計測が可能であることを実証した後に、OPAM-MEGとEEGの同時計測を実現させる上での相互影響評価のため、単チャネル生体磁気OPAMモジュールとGeodesic社製のEGI脳波計を用いて、視覚誘発応答の同時計測を行った。MEG計測時に脳波計を併用することにより、特定の周波数帯のノイズ増大は見られたものの、両システムによる視覚誘発脳磁界・電位の応答を計測可能であることを実証した。この成果は第17回日本ヒト脳機能マッピング学会にて発表を行った。また異なるモダリティの併用による疑似多チャネル化を図りOPAM-MEGデータのノイズ低減の可能性を検討し、日本視覚学会2016年冬季大会にて発表した。さらに次年度以降の計測のため、実験時の頭部位置計測用マウントを設計し、樹脂材料で製作した。またマウントに対する頭部位置をモニターするプログラムを作成することで、位置合わせ機構を試作し、動作の確認を行った。加えて、本研究の同時計測に先駆けて、多チャネルOPAMモジュールを用いたMEGの実験を行い、多チャネルでのMEGの計測が可能であることを実証している。以上の成果を踏まえ、引き続き次年度以降に多チャネルOPAM-MEGとEEGの同時計測を実現し、統合解析手法を組み合わせることで、大規模な冷却装置を必要としない簡便で高精度なヒトの神経活動イメージングを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況としては、開発段階である光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)において、単チャネルOPAMでMEG計測が可能であることを実証した後に、OPAM-MEGとEEGの同時計測を実現させる上での相互影響評価のため、単チャネル生体磁気OPAMモジュールとGeodesic社製のEGI脳波計を用いて視覚誘発応答の同時計測を行った。MEG計測時に脳波計を併用することで、両システムにより視覚誘発脳磁界・電位応答の同時計測ができることを実証した。この成果は第17回日本ヒト脳機能マッピング学会にて発表を行った。また、異なるモダリティの併用による疑似多チャネル化を図ることで、ノイズ低減や信号源推定精度の向上など、統合的な解析につなげることができる。さらに次年度以降の計測のため、実験時の頭部位置計測用マウントを設計、樹脂材料で製作した。このマウントに対する頭部位置をモニターするプログラムを作成することで、位置合わせ機構のプロトタイプを作成した。加えて、本研究の同時計測に先駆けて、多チャネルOPAMモジュールを用いたMEGの実験を行い、多チャネルでのMEGの計測が可能であることを実証できたことから、概ね順調に進捗していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、H27年度に試作した位置合わせ機構を踏まえて、当初の計画の通りにMEGとEEGセンサの相対位置を計測するシステムを作成する。また、多チャネルOPAM-MEGとEEGの同時計測のためのハードウェアの環境を整備し、両システムによるヒトの脳活動の同時計測を行う。また取得したデータに対して、ノイズ低減や皮質活動の信号再構成などを含む統合的な解析手法を提案する。各モダリティのデータの有無による再構成信号の違いを検討し、OPAM-MEG、EEG計測・解析の有用性を検証する。これらの検討結果を国際会議で発表し、また学術論文にまとめる予定である。以上を踏まえて、OPAM-MEGセンサを用いたマルチモーダル計測及び解析の手法提案を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に行った実験結果をまとめた論文の掲載料に使用する予定であったが、現在査読中のため計画を変更し、掲載料への使用を次年度に行うこととし、研究計画の遂行のため実験消耗品を一部を購入することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
以上の理由より、未使用額は掲載料に加え、実験遂行のため実験消耗品の購入にあてることにしたい。
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