本研究ではヒトの脳機構機序の解明のために、光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)による脳磁図(MEG)計測と脳波計測(EEG)の同時計測を可能とするマルチモダリティ脳神経活動計測環境を構築し、両モダリティのデータを統合的に解析する手法を開発することで、より簡便で高精度な脳神経活動計測の実現を目指している。H29年度の実績としては、計測した多チャネルOPAMモジュールを用いたMEG及び別途計測したEEGの実験の結果(センサレベル)を用いて、脳神経活動(信号源レベル)の再構成の解析フローを作成し、さらに開発した再構成信号から脳部位間の向きの有る結合性を評価するための非線形状態空間再構成法に基づく解析ツールと統合することで、新規磁気センサによるマルチモーダル計測から解析までの一連のプロセスを構築した。この成果の一部は招待講演としてKRPアイデアシェアリングコミュニティや国内外の会議にて発表を行った。以上の成果はプロトタイプのOPAMを用いたシステムであるが、QuSpin等の商用のOPAMモジュールにも転用できる技術であり、ウェアラブルな形でOPAM-MEGとEEGの実現することで、大規模な冷却装置を必要としない簡便でより高精度なヒトの神経活動イメージングの実現につながるであろう。これまで計測が困難であったより頭部形状の小さい小児のMEG計測や、ウェアラブルなより自由度の高いタスク時の計測を可能にし、これまで以上にMEGの可能性を広げ得る分野になり得る。
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