研究課題/領域番号 |
15K21119
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安藤 満 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (70737460)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 無細胞タンパク質合成 / 膜タンパク質 / リポソーム / 膜融合 |
研究実績の概要 |
H27年度は膜融合性膜タンパク質組込みプロテオリポソームの構築を目的に、pH応答型、酵素応答型の2種類の膜融合性膜タンパク質発現プラスミドDNAを構築し、リポソーム存在下、無細胞タンパク質合成を行うことでリポソームヘの組込みを評価した。pH応答型膜融合性膜タンパク質では、リポソーム膜への良好な組込みが認められた。この膜タンパク質は正確な立体構造を形成することではじめて、プロテアーゼによる特異的な切断を受けることが知られている。そこで、調製したプロテオリポソームをプロテアーゼと反応させ、その切断断片を分子量を解析したところ、期待される分子量に切断断片が認められ、また、細胞膜表面に存在するリガンドとの結合も確認されたことから、組込まれた膜タンパク質は正確な立体構造を形成していることが明らかとなった。一方で、酵素応答型膜融合性膜タンパク質では、タンパク質合成は認められたものの、リポソーム膜への組込みは殆ど認められず、また、タンパク質合成が途中であることを示すポリペプチドも多く認められた。酵素応答型膜融合性膜タンパク質の膜貫通ドメインは、タンパク質のカルボキシ末端側に存在することからも、組込み効率が低い原因として、膜貫通ドメインまでタンパク質が翻訳されなかったため、翻訳途中のポリペプチドはリポソーム膜と相互作用できず、リポソーム膜へ組込まれなかったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い膜融合性膜タンパク質組込みプロテオリポソームを調製できた。酵素応答型膜融合性膜タンパク質に関しては、予備検討からリポソームの脂質膜組成を変更することで組込み効率の改善が認められたことからも、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
調製した膜融合性膜タンパク質組込みプロテオリポソームを用いて、水溶液のpH、あるいは、各プロテアーゼで処理を施し、膜融合型プロテオリポソームを活性状態にすることで膜融合能の評価を行う。融合による粒子サイズの増大を動的光散乱法で評価する。また、予めリポソーム膜を異なる蛍光色素で標識した膜融合型プロテオリポソームをそれぞれ準備し、膜融合による蛍光共鳴エネルギー移動を測定することで、膜融合の進行具合を継時的に評価する。併せて、膜融合反応前、反応中、および、反応後のプロテオリポソームの形態を透過型電子顕微鏡観察することで評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画に予定していた国内学会への参加を取り止めたことから、旅費として計上していた予算が未使用となったため、平成27年度は一部予算が未執行となったが、執行金額に計画からの大きな変更はない。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度から繰り越した予算は、細胞培養試薬、および、実験動物の購入に使用する。また平成28年度の予算は、予定通り、消耗品の購入と、情報収集の為の学会参加に当てる予定である。平成27年度から繰り越した予算と併せ、平成28年度もほぼ計画通りの予算執行となる。
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