本研究は、種々の膜融合性膜タンパク質をデザインし、無細胞タンパク質合成システムを利用することで、膜融合型プロテオリポソームの調製を行い、得られた膜融合型プロテオリポソームを基盤とした新規薬物内封方法、薬物送達技術の開発を検証することを目的としている。平成29年度は、まず反応溶液中にジスルフィド結合イソメラーゼを添加することで調製したpH応答型膜融合性膜タンパク質組込みプロテオリポソームの膜融合能の評価を行った。種々のpH条件下、Fluorescence resonance enegy transfer (FRET)解消を指標に脂質膜の融合を評価したところ、いずれの条件においても膜融合は認められなかった。また、前年度検討を進めていた酵素応答型膜融合性膜タンパク質の組込み量を改善した膜融合型プロテオリポソームを用い場合においても、pH応答型膜融合性膜タンパク質組込みプロテオリポソームと同様膜融合活性が認められなかった。前年度の実績状況も踏まえ、無細胞タンパク質合成システムを用いてpH応答型膜融合性膜タンパク質全長そのものを組込んだ膜融合型プロテオリポソームを用いても膜融合活性を得難いと考えられる。そこで、膜融合性膜タンパク質の完全長をリポソームに組み込むのではなく、膜融合に不必要とされるドメインを削除したタンパク質を新たに設計し、プロテオリポソームを調製した。その結果、膜貫通ドメインが翻訳されていない不完全なタンパク質においても組込みが認められたことから、比較的疎水性が高い膜融合活性ドメインが無秩序にリポソーム膜に挿入されていると考えられる。すなわち、これまでの検討において膜融合活性が認められなかった一因に、生体内と同様の組込みが起こるとういう仮説に反して、膜貫通ドメインによる無秩序なリポソーム膜への組込みが生じたからと考えられる。
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