研究課題
光合成細菌へリオバクテリア由来の光合成反応中心(RC)の高分解能での結晶構造解析を目指し、精製法の改良および界面活性剤の検討を行った。結晶化には良質で大量のタンパク質が必要である。大量精製には、可溶化効率を上げるのが重要であると考え、膜標品を可溶化する前に膜洗浄を行った。膜洗浄を行ったものと行わなかったもののゲル濾過クロマトグラフィーの結果を比較すると、膜洗浄後では夾雑物のピークが減少し、RCコアタンパク質分画が増加した。収量は、膜洗浄なしの場合と比較して約3倍に増加した。膜洗浄により、膜が均質化され可溶化効率が上がったのではないかと考えられる。次に、結晶化時の界面活性剤の検討を行った。精製標品RCを7種類の界面活性剤に交換し、活性が保持されているか否かを確認した。その結果、7種類すべてにおいて、差はあるものの活性は維持されていた。各界面活性剤に交換したRC標品を4℃で1週間静置した後、スペクトル測定および電気泳動でタンパク質の状態を観察した。その結果、1種類の界面活性剤は、4℃で1週間静置すると白色沈殿が見られ、クロロフィルの吸収スペクトルのピークが減衰した。よってこの界面活性剤は結晶化には不向きであると判断し、残り6種類について結晶化スクリーニングを行った。その結果、C12E8とUDMを用いた結晶で分解能がよかったため、これらについて2次スクリーニングを行った。どちらの結晶も約4Å分解能で回折データを収集し、空間群を決定した。今後、さらに高分解能を目指して結晶化条件や抗凍結剤の条件検討を行う。並行して、先行研究よりDDMを用いた結晶の分解能向上を目指した。結晶化法をハンギングドロップ蒸気拡散法からバッチ法へと条件検討をし直した結果、分解能がやや向上し、現在3.2Å分解能で回折データの処理を行っている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、タンパク質精製法を改良することで一度に大量のRC標品を精製できるようになった。純度、収量ともに向上し、収量は改善前に比べて約3倍になった。そのために、たくさんの結晶化条件を検討することが可能になり、RCの結晶化に最適な界面活性剤を見つけることができた。本年度は、3つの界面活性剤を用いて回折データの収集を行った。今回得れらたデータは、分子置換法を用いて現在構造の精密化を行っている。界面活性剤の違いによりRC自身の構造に差があるところが興味深い。今後、さらに高分解能を目指し、その違いについて議論したい。また、構造情報に欠かせない補欠分子種の情報は、電子スピン共鳴(ESR)法を用いて、各種の距離、角度を測定中である。
今後は、さらなる結晶化条件の検討を行い、分解能の向上を目指す。現在精密化を進めている結晶について、結晶の活性測定を行い、活性が保持されている構造であることを証明する。また、1年目に決定したESRの測定条件をもとに、詳細な測定を行い、各分子種の距離を決定し、配向まで決定することを目指す。現在精製しているRCコアタンパク質PshAには電子を受け渡すためのPshBが結合していない。PshBを再構成することで、PshA-PshB複合体の結晶化も進めていきたい。
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Biochemistry
巻: 54 ページ: 6052-6061
10.1021/acs.biochem.5b00601