研究課題/領域番号 |
15K21124
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
朝比奈 雄也 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (10737232)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖タンパク質 / ペプチドライゲーション / チオエステル法 / 親水性保護基 / 極性反転保護 / インターロイキン-2 / O-結合型糖鎖 / N-アルキルシステイン |
研究実績の概要 |
(糖)タンパク質の化学合成途上、目的タンパク質の部分配列(ペプチドセグメント)の高い難溶性に見まわれ、合成が困難になってしまうことが頻繁にある。そこで、本研究では、難溶性領域の可溶化を促進する親水性保護基(ピコリル基)を開発し、先行研究で合成が困難であったインターロイキン(IL)-2の合成を通じて、より汎用性の高い糖タンパク質の効率的合成法を確立する目的で行った。 まずは、難溶性ペプチドの可溶化を促す親水性保護基、ピコリル(Pic)エステルの開発を行った。市販の化合物から2工程でPic基を有するグルタミン酸誘導体を調製した。次に、難溶性部分配列のIL-2(66-98)及び、(99-133)の調製に用いた。その結果、高い親水性を持つPic基はペプチドの可溶化を助け、先行研究では困難であった高速液体クロマトグラフィー(HPLC)よる精製を可能にした。以上の方法により、従来では全く合成が不可能だった難溶性セグメントの調製に成功することができた。 次に、別途調製したペプチドセグメント、IL-2(1-27)、(28-65)と、先ほど得られた難溶性セグメント2種を順次縮合した。連続的チオエステル法を用いることで、3つのペプチドセグメントをワンポットで縮合し、IL-2の全長配列を得ることに成功した。続いて、側鎖保護基、及びPic基を銀イオン、及び亜鉛により除去し、最後に酸化還元系緩衝液中にて、自発的ジスルフィド結合の形成を行った。これにより得られた糖タンパク質は質量分析、二色円偏光スペクトル、及びバイオアッセイにより、天然と同様の立体構造と生理活性を持つことが分かった。以上の結果から、均一な糖鎖構造を持つIL-2の化学合成の成功が証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で開発した親水性保護基、Picエステルは想像以上に可溶化能力が高く、セグメント3と4の合成が迅速に行えた。次のペプチドライゲーション工程も、可溶化法をしっかりと施したため、効率よく全長ポリペプチド鎖の調製を行うことができた。インターロイキン-2の全合成において、一番の問題がセグメント難溶性であり、これを効果的に解決することができたため、予想を超える進行度で全合成を成功することができた。
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今後の研究の推進方策 |
Picエステルは高い可溶化能力を持っていることが見出された。しかし、固相合成中にペプチド鎖の伸長を一部止めてしまう副反応が明らかになった。より効率のよい調製法を確立すべく、副反応を抑える脱保護条件、及び一部構造の改変等を検討したい。また、異なった糖鎖構造をもつIL-2を得るべく、これに対応した新規糖アミノ酸ユニットの合成を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
以前から当研究室でストックしていた有機溶媒、アミノ酸誘導体を使用したため、消耗品類を買う必要が当年度にはあまりなかった。また、計画が順調だったので、消耗品の使用量も少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
使用しているHPLCの調整、及び有機溶媒、アミノ酸誘導体などの消耗品の補充に当てる。また、今後の研究の推進方策で述べた、親水性保護基の副反応を抑える検討、及び糖鎖構造を変えた新たな糖アミノ酸合成とその糖ペプチド、糖タンパク質合成へと進めていきたい。
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