研究課題/領域番号 |
15K21125
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三上 統久 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (20710388)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / 低酸素 |
研究実績の概要 |
本研究は制御性T細胞・Tregにおける低酸素シグナル、特にHIF-1の役割について解明を目指している。現在までに低酸素環境ではiTregの誘導は阻害されるがnTregは安定に機能することが示されている。 本年度の研究により制御性T細胞を低酸素条件下で培養することでIL-10の産生、CTLA-4の発現、Tim-3の発現が上昇する一方でNRP1の発現が低下するという知見を得た。特にTim-3陽性Tregは生体内においてIL10産生能の高い最終分化状態のTregである事を明らかとしており、低酸素応答がHIF-1依存的にTregの活性化・分化段階の制御に寄与する事が示唆された。さらにこれらの変化はIn vivoにおいてHIF-1aを欠損したマウス由来のTregでも相関関係を見出すことが出来た。Treg特異的HIF1欠損マウスではTim3陽性Tregの割合が減少し、CTLA-4発現量の低下が認められる一方で、NRP1陰性Helios陽性の活性化Treg集団が出現しなくなるという表現型を見出した。またOVA免疫後のTreg特異的HIF-1欠損マウスではTregへの影響のみならず、メモリーCD8陽性T細胞の成立も促進されていた。これらの結果からHIF-1および低酸素環境は制御性T細胞に対して様々な機構による機能制御を行っており、それは実際の免疫細胞活性化に影響を及ぼしていることが示された。これらの知見からTregの分化・活性化における生理的なHIF1の重要性が明らかとなりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、27年度に低酸素環境に影響を受けるTregの候補分子を絞り込むことに成功しており、さらにHIF-1欠損マウスをもちいた知見も順調に得られている。また、CD8陽性T細胞のメモリー成立に影響を与える可能性など新たな可能性も見えてきており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、Tregが低酸素およびHIF-1シグナルで影響を受けた分子の機能について解析を進めると同時に、腫瘍モデルや炎症モデルを用いてその生理的機能を解析する。特にCD8陽性T細胞の表現型に着目した検討を加えることでよりマクロな考察を目指す。
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