研究課題/領域番号 |
15K21139
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中谷 和弘 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50648813)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心筋エネルギー代謝 / CD36 / 心筋症 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
CD36は血小板、単球・マクロファージ、骨格筋、心筋などに於ける長鎖脂肪酸のトランスポーターであり、ヒトのCD36欠損症では心筋症を合併する頻度が高いことを我々は見出している。本研究ではヒトCD36欠損症における心筋症の発症機序解明と治療法の開発を目的として、CD36欠損マウス(以下KOマウス)あるいはCD36欠損症患者iPS由来心筋細胞を用いた検討を行った。前提として、非負荷時のKOマウスの心筋代謝は、糖・ケトン体代謝に依存していることを、メタボロール解析を用いて証明し、本研究期間中に英文誌に論文発表した。(2015年5月21日アクセプト) A.CD36KOマウスにおける心負荷時の心筋代謝変化、心不全発症機序の検討: 野生型マウス(以下WTマウス)、KOマウスを対象として、大動脈縮窄手術(以下TAC)による心負荷を施行した。予備実験の結果を確定するために、対象マウス数を増やした。心エコーでは、TAC12週後においてKOマウスでWTマウスに比し有意に左心室収縮率の低下を認めた。TAC後12週の肺重量、心重量はKOマウスでWTマウスに比して有意に重く、心不全を認めた。心筋肥大、線維化のマーカー遺伝子発現、線維化面積がKOマウスでWTマウスに比して有意に増加していた。以上から、KOマウスは心筋に対する圧負荷時に、より強い心肥大・心筋線維化を呈しやすく、左心室収縮不全、心不全に至ることが明らかになった。心筋TUNEL染色でアポトーシスの程度を解析したが、WT,KOマウス間で差は見られず、アポトーシスの関与は否定された。 B.患者iPS細胞由来心筋細胞を用いた検討:健常人5例由来iPS細胞、心筋症の合併がないCD36欠損症患者(2例)由来iPS細胞、および拡張型心筋症合併CD36欠損症患者2例のiPS細胞の樹立を完了している。健常人3例について、心筋細胞への分化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CD36欠損マウスに心臓圧負荷を行い、心エコー解析、分子生物学的解析、組織学的解析を行い得られた情報から、CD36欠損状態では、心負荷時に心肥大および心筋線維化を来しやすく、左心室収縮不全に至ることが明らかになった。しかしながら、心機能変化の機序として、心筋のTUNEL染色の結果からアポトーシスは関与していないと考えられたが、機序の解明は不十分であり、継続して解析を推進する必要がある。KOマウスで心不全に陥りやすい機序として、負荷時にエネルギー不足に陥ることを仮説とし、エネルギーリザーブを評価することとした。心筋組織内のクレアチンリン酸、ATP、ADP、AMPの含量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量しようとしたが、予備実験においてWTマウスの不全心のエネルギーリザーブの低下をとらえることができずに、測定に関して方法論の再検討を要している。また、患者iPS由来心筋細胞を用いた実験は、まずは健常人5例のiPS細胞のうち、3名分の心筋細胞への分化を行ったが、4名のCD36欠損症患者iPS細胞から心筋細胞への分化は行えていない。平成28年度で、心筋分化を行い、心筋細胞の表現型の差異を解析する必要があり今後も引き続き研究の推進が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
A.CD36KOマウスにおける心負荷時の心筋代謝変化、心不全発症機序の検討: CD36欠損マウスで圧負荷時に高度の心機能低下を呈する機序の解明を行う。具体的な方法としては、脂肪酸・糖代謝を小動物用PETにより解析する。心筋組織内のクレアチンリン酸、ATP、ADP、AMPの含量を、高速液体クロマトグラフィーで計測するが、この測定法の確立に苦心しているため、別の手法として核磁気共鳴装置(NMR)を利用し心筋組織内のクレアチンリン酸、ATP、ADP、AMPの含量を測定する。またメタボローム解析を行い心筋代謝産物の解析を行い、心肥大、心筋代謝に関連した経路のタンパク、リン酸化をウェスタンブロット法で解析する。これらの解析結果を統合し、CD36欠損マウス心筋での脂肪酸代謝変化に伴う心不全の病態解明を目指す。さらに代謝性心筋障害の治療の介入点を明らかにする。 B.患者iPS細胞由来心筋細胞を用いた検討: さらに2名の健常人、4名のCD36欠損患者のiPS細胞から心筋細胞への分化を行い、これまでに分化が成功している3名の健常人の心筋細胞を含めて、CD36欠損の病態を反映しているかどうか、すなわち脂肪酸の取り込み低下がみられるかどうかについてラジオアイソトープを用いた実験で評価する。また、心筋症合併の有無によりそれぞれのiPS由来心筋細胞の表現型にどのような差があるかを、分子生物学的解析、電気生理学的解析などで検討する。さらにiPS由来心筋細胞に低分子化合物ライブラリーを添加し、心筋症合併患者iPS由来心筋細胞の異常を改善しうる化合物をスクリーニングし、CD36欠損症の心筋症患者の治療法開発を目指す。
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