研究課題/領域番号 |
15K21140
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒木 徹平 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (10749518)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 伸縮性導体 / 有機トランジスタ / 低電圧駆動 / 硬柔パターニング基板 / 微細配線 / 透明導電膜 |
研究実績の概要 |
本研究では、ストレッチャブル印刷微細配線技術を用いて、印刷配線と有機トランジスタの接続技術の確立を行い、フレキシブル電子デバイスのオール印刷形成という課題に挑戦する。アプリケーションとして、人体などの曲面にしっかりフィットする伸縮可能な超柔軟トランジスタアレイの開発を目標としている。設定した各フェーズに関して実績を述べる。 フェーズ1「超柔軟構造の開発」に関して、ヤング率の硬/軟パターニング制御を行った基板を塗布技術により開発した。有機トランジスタは、曲げなどのフレキシブル性には優れているものの伸縮した際には特性が急激に劣化する。今回、有機トランジスタを伸長させないような構造として、エラストマー基板内に伸長歪を受けない部分を設けることに成功した。 フェーズ2「有機トランジスタの高性能化」に関して、歩留りの向上、および駆動電圧の低減に成功した。生体用アプリケーションには低電圧駆動のアプリケーションが必要である。今回、パリレン絶縁膜を表面処理によって、3V以下の駆動と同時に大面積製造での歩留りを改善した。一方で、有機トランジスタの印刷形成を行うため、銀塩インクを用いて、微細配線形成技術を確立した。銀塩インクは、低い表面粗さの配線材料となるため、有機半導体の移動度向上に貢献できる可能性が高い。 フェーズ2として、伸縮性導体の特性向上も行った。高信頼性を有する銀ナノワイヤ材料の微細配線技術を湿式プロセスにより確立した。銀ナノワイヤ材料は、高い繰り返し伸縮性も発現して機械的耐久性に優れており、また、表面処理技術によってマイグレーション耐性も向上した。このような機械的耐久性と電気的耐久性に優れた銀ナノワイヤ微細配線は、有機トランジスタを接続するための高信頼性ストレッチャブル配線として使用可能である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
進捗は極めて順調であり、設定していたフェーズに関して状況を下記に述べる。 フェーズ1「超柔軟構造の開発」として、伸縮性導体と有機トランジスタの印刷形成に向けて、簡便に作製できる柔軟構造を試作・検討した。その結果、基板の硬/軟パターニングを、塗布技術によりシンプルに作製可能とした。初年度にて、計画通り、硬柔パターニングの基板作製技術を確立した。 フェーズ2「有機トランジスタの高性能化」として、有機トランジスタと伸縮導体の高性能化を試みた。有機トランジスタにパリレン絶縁膜へ表面処理を行い、有機素子内の界面現象を原子顕微鏡で観察し、トランジスタ特性を評価した。その結果、低電圧で有機トランジスタを駆動することに成功し、歩留り改善も同時に実現した。 さらに、フェーズ2では、銀ナノワイヤと銀塩インクを用いて塗布型電極の形成に成功した。銀ナノワイヤ材料へ表面処理を行うことにより、機械的耐久性と電気的耐久性を有するストレッチャブル配線技術を開発した。この配線は、有機トランジスタ素子外の接続配線として使用可能である。銀塩インクに関しては、有機トランジスタ素子内の電極(ソース・ドレイン・ゲート)として使用が期待される。 フェーズ3「回路設計、印刷プロセスの信頼性向上」に向けて、自己組織化膜を用いたトランジスタ作製と回路作製に着手した。
|
今後の研究の推進方策 |
各フェーズに関する今後の方針か下記のとおりである。 フェーズ1は、順調に開発を終えた。 フェーズ2「有機トランジスタの高性能化」に関して、印刷によりトランジスタ作製を行い、表面状態の制御しながら特性向上を目指す。また、伸縮性導体とトランジスタ電極を接続し、曲げや伸縮下でのトランジスタ特性の変化を低減する。化学処理やレーザー焼結等により、接続部の電気的特性や機械的特性を高める。トランジスタの評価として、伝達特性・入力特性・出力特性等を測定する。 フェーズ3「回路設計、印刷プロセスの信頼性向上」に関して、高性能なトランジスタで大面積アレイの形成を目指す。具体的には、トランジスタの特性向上として応答速度の向上に取組み、大面積アレイとしてアクティブマトリックスやオペアンプなどの回路形成に取り組む。。
|