研究課題/領域番号 |
15K21141
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武田 裕之 大阪大学, 工学研究科, 講師 (00638512)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 保育所送迎行動 / 行動分析 / 保育所サービス / 送迎保育ステーション / 子育て観 / 待機児童 / 共働き世帯 |
研究実績の概要 |
本研究は、子育て・共働き世帯における送迎・通勤行動と保育所の立地及びサービスに着目し、自宅・保育所・就業地の交通手段と立地関係、保育所への送迎行動と子育て観・就業意識等との関係、今後の保育所事業に対応できる制度設計について明らかにすることを目的としている。 昨年度は、送迎負担感と子育て観、就労環境満足度、家庭内分担満足度等の関係を明らかにし、送迎負担感と子育て観との相関を明らかにした。そこで本年度は、送迎行動の負担感を軽減すると考えられる「送迎保育ステーション」に着目し、当該事業が送迎負担感の軽減になっているか、送迎負担の軽減がどのような要因に影響を与えているかを調査した。なお送迎保育ステーションは、駅などの利便性の高い場所に保育ステーションを設け、親はそのまま就業地へ向かい、子供は送迎バスでそれぞれの子供が入所している保育所へ送迎する事業である。結果として、送迎保育ステーション利用者は確かに送迎負担感の軽減につながっているとの実感を持っていることがわかったが、昨年度のアンケート結果と比較して、子育て観への影響はほとんど見られなかった。また送迎負担が軽減されたことによる時間の増加については、多くが仕事や家事に回されており、自分自身の時間として活用されていないことが明らかとなった。一方で、事業主体側に着目すると、送迎保育ステーション事業の実施理由としては、待機児童問題の改善、保育需要の偏りの改善が挙げられており、保護者の送迎負担の軽減は実施理由としての準備は低い。しかし、事業の効果では、上述の2項目はもちろんであるが、保護者の送迎負担の軽減についても高い効果を感じていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「送迎保育ステーション」は特に大都市周辺部の都市においては重要な施策のひとつとなっており、今後導入を検討している自治体もみられる。当該事業は実質的に送迎行動の負担を軽減させるため、子育て・共働き世帯にとっては重要な施策といえる。本年度は、送迎保育ステーションの調査を行い、①実施自治体へのアンケート調査、②実施自治体へのヒアリング調査、③送迎保育ステーション利用者へのアンケート調査を行い、順調に研究が進んでいるものの、③送迎保育ステーション利用者へのアンケートについては、現状の利用者を対象に行ったが、そもそもの利用者数が少ないため、統計学的な分析を行うには不十分であり、アンケート回答者数を増加させるためにインターネットアンケートを追加で行った。そのため、利用者アンケートの分析が想定よりもやや遅れている。しかしながら、全体的にはおおよそ順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は下記の研究を計画している。 ①送迎保育ステーション利用者アンケートの分析:平成28年度に行ったインターネットアンケートを分析し、送迎保育ステーション利用者の特性・ライフスタイルを把握する。同時に、平成27年度に行った保育所利用者へのアンケートと同様の分析を行う。 ②送迎保育ステーション利用者と非利用者の比較分析:平成27年度アンケート(非利用者)と平成28年度アンケート(利用者)とを比較分析を行い、送迎保育ステーションの有効性を明らかにする。 ③研究のまとめ:本年度が最終年度となるため、3年間の研究成果のとりまとめを行い、研究成果については学会等での発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては次の2点がある。①所属する大学の用務により予定していた学会への参加ができなかったため。②送迎保育ステーション利用者へのアンケート調査が2段階に分かれ、アンケートの設問数が多いため、2段階目のインターネットアンケート調査での調査費用をやや過大に評価し、アンケート実施まで研究費をセーブしていたが、アンケート実施が予定より遅れ、その差額分を年度内に執行することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度計画分については大きく変更しない。未使用額分については、上記の理由①が影響しているが、次年度については学会日程との干渉がないため、次年度予定しているものに加え、学会参加、自治体への追加ヒアリング、知識提供者との面談などの旅費として使用する計画である。
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