本研究では、非平面π骨格のひずみエネルギーの利用を提案し、その機能開拓を試みた。具体的な利用法は、折れ曲がり骨格を持つシクロオクタテトラエンを左右から引っ張るという非常にシンプルな方法でそれを平面化、即ち化合物の遷移状態を取り出すものであった。この試みは遷移状態における分子の構造解明や電子物性の解明に大きく役立ち、π電子系化合物におけるひずみエネルギーの利用について一つの道筋を与えるものになると考えている。 目的化合物を幾つもの合成ルートによって合成を試みたが、いずれも目的物を得るには至らなかった。今後はその知見を活かして、より合成が可能と考えられるルートによって合成を引き続き試みる。
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