研究課題/領域番号 |
15K21144
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森永 英二 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80432508)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生産スケジューリング / 生産シミュレーション / ディスパッチングルール / 最適化 |
研究実績の概要 |
工場の効率的運用に欠かせない生産スケジューリング問題に対し、条件の変動に柔軟に対応して動的に修正スケジュールを生成できる、自律分散型の手法が注目されている。昨今の計算機技術と情報通信技術の発達により、生産設備単位で高度に分散化された「超分散型生産システム」の実現が、現実味を帯びつつある。本研究では、このような生産システムにおける生産スケジューリングを対象として、集中管理型の要素を必要としない、設備間の情報交換のみによる自律分散型生産スケジューリングの方法論の確立を目指している。 平成27年度の成果で得られた、フレキシブルジョブショップスケジューリングの手法では、機械の選択や機械のバッファ内のジョブ群からのジョブの選択に関して、最も単純な優先規則に基づく選択を行っていた。平成28年度は、より複雑な種々の優先規則やそれらを融合させた規則に基づく選択を実施できるように、拡張を行った。これによって、より適切なスケジュールを得ることが可能になった。 また、搬送に関するデバイスをインテリジェント要素として、本手法で得られたスケジュールに基づいて簡易なシミュレーションを行えるようにし、超分散シミュレーション手法との連携を進めた。これにより、本スケジューリング手法で得られたスケジュールに基づいて、搬送まで含めたシミュレーションを行い、スケジュールの詳細な評価を行うことが可能になった。 さらに、その評価結果を受けて、採用する規則を変更して適正なスケジュールを得るための具体的な変更の仕組みを与え、搬送をも含めた上で最適化を図るための枠組みを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、(1)種々の優先規則への拡張、(2)搬送を考慮した手法への拡張、(3)簡易システムによる検証、を平成28年度の実施項目として設定していた。また、(4)超分散シミュレーション手法との連携を平成29年度に実施する予定であった。 (1)については、これまで用いていた最も単純な規則(機械選択についてはPT則、ジョブ選択についてはSPT則)の処理をベースにして、LPT則などの、次工程に関する情報のみで決定が行われる規則への拡張を行った後、NINQ則やLWKR則等の最終工程までの情報をも必要とする規則やEDD則等の納期の情報をも必要とする規則への拡張を行った。さらに、それらの規則で決まる優先度の重み付け和によって決定を行う仕組みも構築した。 (2)に関しては、超分散シミュレーション手法の開発においても搬送を重視した検討が進められてきており、それとの連携を踏まえた整合性が重視されることから、(4)と合わせて取り組んだ。自動搬送車をインテリジェント要素として組み込み、本手法で得られたスケジュールに基づいてシミュレーションを行う際に、機械間の搬送が必要な時に、空いている搬送車のID番号の大小で優先度を与える規則に基づいて搬送処理の割り当てを行うようにして、搬送時間が含まれたシミュレーション結果を求められるようにした。さらに、(4)で予定していた、シミュレーション結果を踏まえてスケジュールを修正する、最適化の枠組みの構築を進めた。 上記の通り、(4)を優先することにしたことから、(3)に関しては次年度に実施することにしたが、プログラム実装によるソフトウェアのみでの検証は実施し、開発した内容の実行可能性については確認している。 以上の通り、項目の実施順序の変更はあるが、研究期間全体で予定している実施項目の進捗という点では順調に実施できており、研究全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、搬送の考慮および超分散シミュレーション手法との連携をさらに進める。搬送経路の考慮や、搬送車の割当に関する複雑な規則への対応といった高度化を図る。 また、簡易生産システムによる検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
開発した手法の検証を行うための簡易生産システムの構築には着手したが、現在までの進捗状況の項に記したように、次年度を中心に実施することになり、その段階で必要となる機材が生じたときの執行のために繰り越す必要があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
簡易生産システムの構築のための機材の購入に使用する予定である。
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