本年度も野生型Ret-GFPノックインマウスを主に使用し、野生型RETタンパク質の細胞内トラフィッキングをタイムラプスイメージングにより観察した。様々な細胞種における野生型RETタンパク質の動態を捉える事に成功し、伸長中の軸索では軸索先端から細胞体への逆行性輸送が有意であること、移動性細胞である腸管神経前駆細胞では、移動方向に対して核より前方に集積し、そこから顆粒状のシグナルが活発に動く事を見いだした。 我々は前年までに、RETのトラフィッキング機構に細胞外基質が関与している可能性を考え、重要な因子としてbeta1 integrinの機能を解析した。しかしその後の解析でbeta1 integrinノックアウトマウスの表現型にばらつきがあり、毎回再現性ある結果を得る事が困難であった。このためRETのトラフィッキング機構における細胞外基質の関与について、正確なメカニズムを把握することは出来なかった。 変異型Ret-GFPマウスについては、ケージ数の問題やES細胞培養上の問題などがあり、年度内にマウスを作成する事が出来なかった。一方代替法として、我々はCRISPR/Cas9システムによる一塩基置換を野生型Ret-GFPノックインマウスに施す事により、変異型Ret-GFPマウスの作成を試みている。本年度はそのシステム導入の検証実験を重ね、マウス受精卵エレクトロポレーション法を介したCRISPR/Cas9システムにより、特定塩基配列へ変異を導入する事に成功している。今後この手法により変異型Ret-GFPマウスを作成し、病態誘導機構におけるRETのトラフィッキング機構の解析を進めたい。 またこの手法により、我々は野生型Ret-GFPマウスへGdnf遺伝子の変異導入を行う事により、リガンド不在下でRETがどのような細胞内動態を示すのかについても解析を進めている。
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