本研究では、メラニン色素を生成する色素細胞(メラノサイト)に特異的な細胞小器官メラノソーム内でメラニン色素がデポジットする足場となるアミロイド様タンパク質のPMEL17の形成及びメラノソーム成熟にPMEL17のプロセシング酵素の1種と考えられているBACE2のパルミトイル化が及ぼす影響を理解することを目的とした。 今回の研究によってBACE2はヒト色素細胞内で2個のシステイン残基(C476、C496)がパルミトイル化を受ける可能性が高いことが明らかとなった。パルミトイル化阻害剤2-ブロモパルミチン酸を色素細胞に暴露するとメラニン生成が亢進する。これはメラニン生合成の鍵酵素であるチロシナーゼの分解阻害に起因すると以前我々は報告した。加えて今回の研究によってパルミトイル化の阻害は、BACE2の発現量には影響しない一方で、PMEL17の発現レベルそのものを増加させることが明らかとなった。このときPMEL17のRNA量に変化は無かった。また、PMEL17自身もパルミトイル化を受けることが明らかとなり、翻訳後修飾によってPMEL17の挙動が影響を受ける可能性が示唆された。以上の結果から詳細は明らかではないが、PMEL17及びメラノソームの成熟には当初予想していたプロセシング酵素BACE2のパルミトイル化ではなく、PMEL17のパルミトイル化が関与している可能性も示唆された。PMEL17は、メラニンモノマーの重合を促進しメラニン生成を亢進すると報告されており、メラニン生成及びメラノソーム成熟において、パルミトイル化による制御が大きく関与していることが今回の研究によって示唆された。
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