研究課題/領域番号 |
15K21157
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松本 卓也 神戸大学, その他部局等, 助教 (00625642)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マルチエージェントモデル / 都市交通シミュレーション / 最適化 |
研究実績の概要 |
交通インフラ・モビリティの評価・最適化シミュレーション・モデルについて,パーソントリップODデータをベースとした都市交通シミュレーションを行うための数理最適化手法を用いたマルチエージェント・シミュレーションモデルを構築した.このモデルは,エージェントの意思決定に数理最適化手法を用いることにより意思決定モデル作成の困難さを克服していることに特徴を持つ.それにより生じる多大な計算負荷を,経路探索の一部共通化や並列計算が可能な構造とすることにより削減しつつ,一定のシミュレーション精度を確保している.また,住人ひとりひとりのコスト・疲労度に対する価値観を考慮したシミュレーションを行えるモデルであり,高齢者などの交通弱者に注視したシミュレーションを可能とする.構築したモデルを用いたシミュレーションにより,富山市中心街を対象とし,数十万エージェントのODに対するシミュレーションを実用時間で完了することができることを確認し,また,都市交通網に変化があった場合についてのシミュレーションを行い,モデルの動作を確認するとともに一定の妥当性・実用性を示した.この成果については電気学会論文誌Cに論文が掲載された. それと並行し,構築したモデルの住人エージェントのパラメータ推定のための交通行動に関するアンケートを作成し,富山県のある高校に対して実施し,生徒およびその家族数百人からの回答を得ることができた.このデータを元にエージェントのパラメータ推定を遂行中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に予定していた「交通インフラ・モビリティの評価・最適化シミュレーション・モデルの構築」が達成できている.また,同年度から平行して実施する予定であった「シミュレーションのためのODデータ取得とエージェント意思決定パラメータ構築」についても研究協力者のサポートの元,アンケート作成・回収・データ分析が進行中である.
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーションモデルのフレームとなるマルチエージェント・シミュレーションモデルの構築は達成された.このモデルを活用し,都市交通の評価・最適化およびその現実へのフィードバックを行うことが今後の方針である.この際,必要となる都市交通インフラデータ,エージェントのパラメータ,ODデータの充実を行っていく.都市交通インフラデータについてはオープンデータ地図からの取得を進行中であり,エージェントパラメータについてもアンケート結果からの推定を行っている. これらと平行して,現実へのフィードバックとして,コミュニティバス路線の評価・最適化などを図る予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年に予定していた計算機の導入を,構築したシミュレーションモデルの現在のシミュレーション対象に対する計算負荷が想定より小さかったため導入していない.次年度以降,さらに大規模なシミュレーションを行う際に導入する予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
適切な時期に計算機を導入し,大規模なシミュレーションを行っていく.また,研究協力者とのミーティング,および研究成果の学会・講演会・国際会議での発表,国内/国際論文誌への投稿のため,旅費および論文投稿料として研究費を使用する.
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