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2017 年度 実施状況報告書

自然災害が及ぼす保険会社への財務的・制度的影響に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K21158
研究機関神戸大学

研究代表者

山崎 尚志  神戸大学, 経営学研究科, 教授 (30403223)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード地震保険 / リスクマネジメント / 保険加入行動
研究実績の概要

平成28年度までは台風に焦点を当てた研究を行ってきたが,平成29年度以降は地震と地震保険の研究を中心に行っている。平成29年度は,わが国の地震保険制度の調査と海外の災害保険との比較および災害保険の需要分析のレビューを行った。
わが国の地震保険は,被災者の生活の安定への寄与を目的として創設されており,政府による最終的なリスクが保証されているという特徴を持っている。そのため,保険料率は収支の償う範囲内においてできる限り低い料率で算出され,各損保会社で一律に適用されている。保険料率は建物の構造と所在地によって区分され,さらに建物の免震・耐震性能等に応じて割引される。
消費者は一般的に地震のような発生確率の低いイベントに対して保険をかけることを好まず,しばしば期待効用理論と非整合な行動を取ることが知られている。地震保険の需要は最近発生したかどうかという事実に影響を受け(Browne and Hoyt (2000)),自然災害に対する備えは直近の災害の困難や破壊の記憶が色あせるにつれて弱まる (Brummond (1994))。
Cagle and Harrington (1995)は,保険価格と資本に対して需要が非弾力的であれば,大災害後の業界全体の資本プールの減少(資本ショック)が保険料の高騰を招く可能性があることを指摘している。実際,Born and Viscusi (2006)は,米国において災害後に保険会社が損失を埋め合わせるために保険料を引き上げたり,保険引受を減少させたり,災害を起こした州から撤退するといった行動が見られることを報告している。一方で,わが国の保険料率はあくまで将来の地震リスクのみを基準として算定されており,その時点での準備金の大小は料率に反映されない。したがって,わが国地震保険制度には海外で見られるような資本ショックによる保険料の高騰の可能性はないといえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

平成28年度時点で台風と損保会社の企業価値を分析した研究成果が海外ジャーナル他数点の雑誌に刊行されており,平成29年度以降は地震を対象とした研究に焦点を移している。地震保険の実証分析のフレームワークもほぼ固まっており,データも取得済みである。

今後の研究の推進方策

平成30年度は本科研の最終年度であることから,地震保険研究の成果を出すことを目標とする。平成29年度は,神戸大学の各務和彦教授,東京理科大学の柳瀬典由教授,ウィーン経済大学のPetra Staufer-Steinnocher教授,三井住友信託銀行の前智彦氏らと連携して研究を行ってきたが,今年度も随時彼らと連携して研究を進めていく。現在,巨大地震がわが国地震保険の加入行動にどのような影響を及ぼしたかについて分析を行っており,今後海外学会で報告を行い,その内容を基に論文を完成させる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 図書 (1件)

  • [図書] リスクマネジメント2018

    • 著者名/発表者名
      柳瀬 典由、石坂 元一、山﨑 尚志
    • 総ページ数
      260
    • 出版者
      中央経済社
    • ISBN
      978-4502256912

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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