本研究は専門機関への来談前および診断後における発達障害児の親の援助要請を促進するための具体的な方策を得ることを目的とした。特にインターネット検索行動と援助要請困難感に着目して検討するものであった。最終年度はこれまで収集したデータの分析を行い,学会発表等によって成果の公表を行った。 研究期間全体を通して,以下のような調査研究を行った。①検索エンジンにおける発達障害関連用語の検索状況について、google trend上のデータ収集を行い,その解析を行った。②発達障害児の親を対象に診断前の援助要請困難感について面接調査を行った。③1年間にわたる計4回のオンライン調査によって,相談機関やインターネット上の援助要請やストレスの観点から分析を行った。その主要な結果は以下の通りである。①多くの自閉症児の親が子どもの障害の発見前にインターネット上で情報検索を行っていること,そして診断後においても日常的に情報検索を行っている実態がある。②オンライン上の匿名他者に対して援助要請を行っている親が一定数みられること。③診断前に援助要請を困難にする体験として,周囲との認識の差異,情報の不足,障害観のギャップなどが考えられる。④オンライン上の情報を得ることはストレスの高まりによって相談機関への援助要請を高めるが,オンライン上で情緒的サポートを受けることは逆に援助要請を阻害する可能性が考えられる。⑤オンライン上で情緒的サポートを受けることはストレスの悪化につながることが示唆される。以上の結果から,発達障害児の親の援助要請を促進する上で,周囲のソーシャルサポートだけでなく,オンライン上のサポートや情報の観点から検討していく必要性が考えられた。
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