研究実績の概要 |
希土類錯体の4f電子由来の特徴的な発光特性を活用した新規機能性分子材料として、細胞などの水溶液系や界面領域で、『標的基質分子を選択的に光検出するための発光センサー』である「多点的な基質分子認識能を有する新規発光性希土類錯体」の開発に取り組んだ。具体的な研究項目として、 A)水系で強発光性を示す希土類錯体の開発と多点的な基質分子認識部位の導入 B)アルカリ金属イオン(Na+, K+)分子認識とカチオン・アニオン(NaCl, KCl)マルチセンシング C)糖分子(D-グルコース、D-ガラクトース)に対する多点分子認識能の発現 について検討した。A)では、希土類錯体に『発光センサー機能』を発現させるため、十分な発光性と多点的な基質認識能を付与する適切な分子設計の検討とそれら錯体の有機合成を行い、新たに『発光センサー』としての新規発光性希土類錯体の開発に成功した。また基質認識時における発光機能発現のメカニズムを知ることを目的の一つとして、錯体構造と光物性との相関について各種構造解析や発光測定を行い、標的基質認識時にどのような機構を経て希土類発光増減が生じるのかを明らかにした。それらの知見をもとにB)やC)についても検討を行い、その結果、「カチオン・アニオン両基質に対する多点的認識能を有する新規発光性E(III)錯体を活用したLiClやNaCl基質に対する発光センシング」の開発や、複数の基質分子を同時に検出するための新たな分析手法として「複数の希土類イオンを用いたE(III)/Tb(III)混合希土類錯体による発光色の変化を伴ったレシオメトリックな発光センシング系の構築」に成功した。また得られたこれらの研究成果は、下記の「7.研究発表」の項目の通り報告済みである。
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