研究課題/領域番号 |
15K21164
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹原 宏明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60723088)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオデバイス / 埋め込みデバイス |
研究実績の概要 |
近年、診断・治療を一体化する新たな医療技術が注目されている。本研究では、生体内での光センシング・光治療を一体化するデバイスシステムの実現を目指し、生体内留置可能なバイオ光学素子と埋植型フォトニックLSIデバイスの開発を目的としている。本年度は、前年度に開発したバイオ光学素子であるハイドロゲル製光導波路及びフォトニックLSIデバイスを生体内に埋植し、生体内での光伝送の原理実証を進めるとともに、生体内留置可能なバイオ光学素子の更なる微小化に向けたデバイスプロセス技術について検討を進めた。まず、生体内での光伝送の原理実証については、生体計測情報の光出力を可能とする光通信用埋植型LSIチップを開発し、ハイドロゲル製光導波路を用いた光通信による情報伝送を原理実証した。バイオ光学素子のためのデバイスプロセス技術の開発については、設計の自由度・制御性、形状の再現性、量産性に優れるモールディング法により生体吸収性ポリマーの精密成形プロセス技術について検討した。高分子材料は、成形加工プロセス条件により結晶化度・配向性が異なり材料特性が変化するため、成形プロセスを考慮した材料特性評価が重要である。そこで、精密成形加工されたサブミリメートルサイズの微小試験片に適用可能な応力-変位計測システムを構築した。本技術は、機械的強度といった材料特性を制御した生体吸収性ポリマー材料の精密加工を実現する技術として、体内で用いる医療デバイス開発への応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体内での光伝送の原理実証については、光源LED及び受光用PDをハイドロゲル製光導波路に固定化してマウス皮下に埋植し、光による生体内情報伝送の原理実証を行った。光通信用埋植型LSIチップは、生体計測用イメージセンサ回路、クロック生成回路、イメージセンサで取得した生体画像を外部出力するためのパルス幅変調回路から構成されるチップを用いた。埋植型LSIチップが取得した撮像画像が伝送され、ハイドロゲル製光導波路を介した光通信による情報伝送が可能であることが確認されたことから、生体内での光による情報伝送のコンセプト実証を達成した。さらに、バイオ光学素子のためのデバイスプロセス技術の開発については、マイクロモールディング法を用いた生体吸収性材料の精密加工プロセスを構築するとともに、サブミリメートルサイズの微小試験片に適用可能な材料評価手法の構築を進めた。以上の進捗状況を踏まえ、当初の計画通り順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
生体吸収性材料のための精密成型加工技術のさらなる高度化を目指し、高分子材料の結晶化度・配向性を制御したマイクロモールディングプロセスの開発及び、生体吸収性材料に適用可能なエレクトロスプレー技術を応用したコーティング技術の開発を進める。また、これまでに試作したバイオ光学素子を用いた光センシング・光治療一体化システムについて、幾何光学モデルと生体組織モデルを統合した光学解析による機能評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通りの研究実施と予算執行の中で生じた僅かな額の未執行分です。当初の研究計画通りの研究実施により執行予定です。
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