研究課題/領域番号 |
15K21167
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
成田 綾 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (10569271)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シャペロン療法 / ゴーシェ病 / ミスフォールディング病 |
研究実績の概要 |
ゴーシェ病は、ライソゾーム酵素のβグルコセレブロシダーゼの欠損により生じる代謝変性疾患であり、非神経型(Ⅰ型)と急性(Ⅱ型)及び亜急性(Ⅲ型)神経型に臨床分類される。本邦では神経型が多く、標準治療である酵素補充療法では中枢神経症状の改善が望めない。そこで我々は血液脳関門を通過しうる低分子化合物を用いて変異酵素蛋白の構造を安定化し、機能の回復を図る薬理学的シャペロン療法の開発を行ってきた。一方、シャペロン化合物の多くは基質競合阻害剤であることから、高濃度投与時の阻害活性が臨床応用に向けた問題である。 そこで本研究では、小胞体中性環境下で活性型として変異酵素蛋白と結合し、ライソゾーム酸性環境下で不活型に変換され、酵素蛋白と解離し阻害活性が低減するpH感受性新規シャペロン化合物を合成し、その薬物動態や基質除去効果等のライソゾーム機能への作用機序の解析を細胞培養系とモデル動物にて行うと共に、オートファジーやαシヌクレイン蓄積等、神経変性要因への効果を検討し、神経変性の病態解明と新規治療法開発の為の基盤研究を行う事を目的とした。 今年度は、活性型化合物として新規ノジリマイシン誘導体(TMB65)とその不活性型化合物を合成し、培養皮膚線維芽細胞を用いて薬物動態を検証した。TMB65は培養線維芽細胞において強いシャペロン活性を示し(IC50:0.2μM)、高濃度(200μM)でも阻害活性を示さなかった。患者由来培養皮膚線維芽細胞の蛍光免疫染色では、ライソゾームでの酵素活性の増加を認めた。ESI-MSによる解析では、細胞内でのTMB65の完全な不活性型への変換を確認し、TMB65はコンセプト通りの細胞内動態をとっていることが示唆された。加えて、外因性酵素製剤との共培養では濃度依存的なシナジー効果を確認し、内在性の変異酵素の安定化に加えて、外因性酵素製剤の安定化という新たな効果も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゴーシェ病に対するpH感受性シャペロン化合物の開発については、当初の研究計画の通り、新規シャペロン化合物(TMB65)を合成し、培養線維芽細胞を用いた薬物動態の解析を行った。13.研究発表に記載したとおり、本結果を論文として発表し、また国際学会等でも発表を行った。これにより、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究計画に沿って、TMB65の培養細胞を用いた中枢移行性試験、オートファジー系やミトコンドリア機能に対する薬剤の影響を検証する。また、最終年度に予定しているモデル動物の投与実験に向けた準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた物品の納入が遅れたため、決算に間に合わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた物品を購入する。
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