シャペロン療法はゴーシェ病の有望な中枢神経治療法だが、化合物の多くは基質競合阻害剤の為、高濃度投与時の競合阻害(阻害活性)が問題である。そこで我々は小胞体中性環境下で活性型として変異酵素蛋白と結合し、ライソゾーム酸性環境下で不活型に変換され、酵素蛋白と解離し阻害活性が低減するpH感受性新規シャペロン化合物(TMB65)を合成し、患者由来培養細胞系を用いて、シャペロン効果(残存酵素活性の上昇)を確認した。そこで本研究では、細胞培養系とモデル動物にてTMB65の薬物動態や基質除去効果等のライソゾーム機能への作用機序の解析、オートファジーやαシヌクレイン蓄積等、神経変性要因への効果を検討する事とした。 本年度は、TMB65がシャペロン効果を有する遺伝子変異型についてスクリーニングを行うために、複数の患者由来培養皮膚線維芽細胞を用いてシャペロンテストを行い、現在臨床応用可能なシャペロン化合物であるアンブロキソールとその有効性を示す変異型が異なる事を見出した。このことは複数のシャペロン化合物を用いる事で、治療対象となる症例の増加が期待されることを意味する。また、シャペロン化合物をヒト組み換え酵素製剤と併用することでシナジー効果を認めた。加えて、ゴーシェ病患者由来培養皮膚線維芽細胞では、ミトコンドリア呼吸鎖酵素の活性は正常であっても、ミトコンドリア膜電位や酸素消費速度(OCR)が著明に低下しており、シャペロンを投与することでそれらが改善することを見出した。
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