研究課題/領域番号 |
15K21171
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
鈴木 美成 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (40469987)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PM2.5 / ICP-MS / リアルタイム分析 / 金属 / 硫黄 / 同位体比 |
研究実績の概要 |
風向風速ベクトル図との比較から、無風状態時にNa, Mg, Cd濃度が増加しているパターンが認められたため、近隣地域が元素排出に寄与していることが考えられた. さらに,HYSPLITモデル (NOAA)を用いた後方流跡線解析に,リアルタイム分析結果から得られた1時間ごとの元素濃度の平均濃度を用いた重み付けを行った濃度重み付流跡線解析 (CWT) を行い,島根大学に到達した海抜500, 1000, 1500 mの空気塊を96時間追跡して元素の排出源の推定を行った.その結果,CdやPbは国内からの影響が大きかったが,Asは中国・モンゴルからの寄与が大きかった.Sは上海近辺の沿岸部や西安近辺の内陸部で高い寄与が疑われた. イオウ同位体比については,PM2.5濃度が30 μg/m3以上が必要であると昨年度試算していたが,20~25 μg/m3程度でも場合により,不確かさは大きいものの同位体比分析が可能であった.しかしながら,こういったPM2.5濃度が高い時間に合わせて測定を行うこと自体,予報の誤差などにより困難であり,想定していたように常にイオウ同位体比を得ることは困難であった. 本研究で確立したリアルタイム分析システムを応用し,ストロンチウム90に最適化させたPM2.5中放射性ストロンチウムの迅速分析法も確立した.この結果については,日本分析化学会 第65年会にて発表し,トピック講演に選ばれた.また,本手法は特許への申請(特願2016-155217)を行い,Spectrochimica Acta Part B: Atomic Spectroscopyへ投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定に際しての,検量線を測定するタイミングや測定開始前に導入系の洗浄を必ず行うといったプロセスの最適化により,金属元素のリアルタイム分析および濃度重み付流跡線による解析は,順調に進んでいる.得られたデータの解析も順調に進んでおり,測定データをGIS上で表現する段階まで問題なく実現できている.
一方で,硫黄の同位体比分析については,常に不確かさを担保するのに十分な感度で測定できたわけでななかったが,32Sと34Sの地理分布には相違が認められ,アジア大陸内陸部を通過した際に34S/32S比が高くなった.また,観測地点である松江市から大阪周辺の日本上空においても34S/32S比が高くなった. 現在,バックグラウンドの測定を合わせて行うことで妥当な測定値となることが試験的な分析から確認されている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,24時間連続のリアルタイム分析を行う.その際には,現在PM2.5濃度の予報に用いているSPRINTERSだけでなく,日本気象協会の予想も合わせて行う.また,5月には状況によって複数回の測定を行い.PM2.5が高濃度のイベントに合わせた測定を行う.
現在はリアルタイム分析結果を個別にGIS上で解析しているが,今後は1年間を通して,あるいは季節ごとに1年間分のCWT結果をまとめることで,緯度経度が1度間隔のグリッド内の元素濃度負荷を算出する.流跡線が通過したグリッド数だけのた元素データを得ることができ,そのデータの多変量解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
高純度試薬として計上していたもののうち多元素混合標準溶液は,島根県内企業との共同研究から支出できたため,差額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
PM2.5が高濃度となるイベント時に月1回以上測定を行うための消耗品だいとして使用する.
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