研究実績の概要 |
毎月行っているAPMの分析結果では、北西からの流跡線の頻度とPM2.5中元素濃度は66元素61中元素で正の相関を示していた。他の方角では流跡線の頻度と濃度との正の相関は弱いあるいは負の相間であった。排出源が自動車とされるRh, Pd, Ptの地殻に対する濃縮係数は非常に大きく、北西からの流跡線の割合が増加するにしたがってPM2.5中のRhとPdの濃縮係数が増加する傾向にあった。このように、3週間の捕集期間の全体的な傾向として捉えてしまうと、越境汚染による影響が強い結果になってしまう。 一方で、米国海洋大気庁のHYSPLITモデルを用いて,島根大学に到達した海抜500, 1000, 1500 mの空気塊を96時間追跡して得られた後方流跡線と,ガス交換器とICP-MS/MSを接続して,10分間隔で得られた大気中金属濃度のデータを組合わせて行った濃度重み付け流跡線 (CWT)解析を行うと単純な3週間の連続捕集からは得られない情報を抽出できた。2016年3月19日の測定結果からCWT解析した結果、この日の島根県松江市のPM2.5中Mn, Fe濃度は明らかに中国北部からモンゴルの影響を強く受けていた。一方で、SbやPbは日本上空とくに関西圏からの影響を強く受けていた。これまでの報告から、Sbはゴミ焼却施設からの寄与だと考えられる。越境汚染問題を解決するには、それぞれの排出源の寄与率を定量化することは非常に重要である。本研究で用いたリアルタイム分析は、起源を分けることに有用であること、元素によっては国内からの影響の方が強いことを示すことが出来た。
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