研究課題/領域番号 |
15K21172
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
管野 貴浩 島根大学, 医学部, 講師 (60633360)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 顎骨再生 / 足場材料 / 3次元多孔質生体吸収性足場 / iPS細胞 / 骨髄由来間葉系幹細胞 / 骨形成 / 骨伝導能 |
研究実績の概要 |
広範囲の顎骨欠損部の回復には、自家骨移植が最も確実で頻用される再建治療法である。しかしその外科的侵襲性は高く、組織工学的手法を応用することで安全に効率的かつ効果的に顎骨再生が可能となれば、臨床的治療効果は高い。本研究は、新規に開発され解剖学的に複雑な顎顔面骨への応用を可能とする熱変形性による簡易加工性能と高い骨伝導性、生体吸収置換性、さらに機械的強度を有する骨再生の足場材料として開発された3次元多孔質非焼成ハイドロキシアパタイト配合ポリD/L乳酸(u-HA/PDLLA)複合体を用い、これに骨形成細胞への誘導を行った人工多能性幹細胞(iPS細胞)を応用し、骨再生治療法確立に向けた実験的研究を目的とした。 本年度は、in vitroにおいて人工多能性幹細胞(iPS細胞)の培養安定化への環境整備を行い、Embryonic Body (胚様体; EB)を作製し、これからEBを単一細胞化しFACSを用いて骨形成に有意な細胞のソーティングを行う手技の習得をすすめるも、安定化には更なる時間をようするものと考えられた。そのため、これと並行し、in vivoでのラット顎骨に欠損(critical bone defect)を作製し、多孔質u-HA/PDLLA複合体の顎骨欠損部への移植による骨再生および修復過程に関して動物モデルの確立を行い、Micro-CTおよび組織学的検索手法を用いた骨形態及び組織学的評価を行うこととした。さらに、iPS細胞研究に先立ち、細胞移植群としてヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)(MSCとしてLNGFRおよびTHY-1の両者の発現するダブルポジティブなもの)を共同研究者らと確立し、多孔質u-HA/PDLLA複合体へ移植を行う研究群を作製し、比較検討を行った。パイロット研究の結果ではあるが、多孔質u-HA/PDLLA複合体単独群と比較し、hMSC移植群では、有意な顎骨再生と骨癒合経過が確認された。hMSCはiPS細胞同様に有益な細胞ソースであり研究を発展させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初の、in vitro系での人工多能性幹細胞(iPS細胞)の培養安定化への環境整備にはさらなる時間を要するものと思われるが、in vivo系での実験を先行させ、ラット顎骨欠損モデルにおいて安定した結果が得られており、さらにヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を培養確立し、移植応用することで有用なデーターが多数得られており、おおむね順調であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、in vitro系での人工多能性幹細胞(iPS細胞)研究を継続し、いったんEmbryonic Body (胚様体; EB)を作製し、これからEBを単一細胞化しFACSを用いてALP (アルカリフォスファターゼ) 陽性細胞のみを選別ソーティングすることで、骨形成細胞前駆細胞のみを効率よく骨再生に利用することを継続するが、平成27年度において、多大なコストを要し課題であったことから、iPS細胞を細胞ソースに用いる予備実験を継続するが、一方で、われわれのが平成27年度にあらたに確立成功させた、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を細胞ソースとし、顎骨欠損モデルにおける有用な骨再生足場材料である多孔質u-HA/PDLLA複合体との移植による研究を発展開発することも、今後の研究の推進方策と考えられ、それらを見極めながら研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は予定通りに進んでおり、次年度も研究計画に準じて適切に使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
In vitroおよびIn vivo実験系ともに、研究を多く予定しており細胞および動物実験群の両者に対する消耗品および飼育費用に多くの支出が予定される。また得られた成果について、国内外での研究成果発表および学術論文として発表を予定しているため研究遂行に研究費を多く要するものと思われ、引き続き適切に使用していく。
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