本研究課題では、遺伝子修復間葉系幹細胞を用いた低フォスファターゼ症の治療技術開発を目的に研究を行っている。最終年度は、昨年度に導入・繁殖させた低フォスファターゼ症モデルマウス(Akp2 KOマウス)への間葉系幹細胞の移植を中心に研究を行った。 間葉系幹細胞の移植条件を最適化させるため、まず野生型マウスに対して各種間葉系幹細胞の移植を行った。生後8週齢の野生型マウスに、①野生型マウス由来高品質間葉系幹細胞、②ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(市販品)、③ヒト骨髄由来高品質間葉系幹細胞(自家調製、CD90/CD271両陽性の細胞)の3種類の細胞を移植した。いずれの細胞も、1×10E6 cells / mouse以下では有害事象や非移植群との差は認められなかった。高容量(2×10E6~ cells / mouse)の移植においては、②の移植直後に肺塞栓を生じ、移植から数分でマウスが死亡した。一方、③では2×10E6 cells~1×10E7 cells / mouseの移植細胞数でも一切有害事象を示さず、移植後3か月まで非移植群と差は認められなかった。 次に、低フォスファターゼ症モデルマウスに①~③の細胞を移植した。免疫応答が比較的未熟と考えられる出生直後(生後3日以内)に移植を行った。①では、細胞数の確保が難しいため1×10E4 cells / mouseで検討を行い、②および③については、5×10E5 cells / mouseで移植を行ったが、いずれの細胞でもモデルマウスの症状改善には至らなかった。現在、組織学的解析を進めているが、移植細胞数や移植回数について、さらに検討が必要と考えられた。 今後は、iPS細胞と遺伝子修復技術ならびに間葉系幹細胞への分化誘導や、モデルマウスと重度免疫不全マウスとの交配による、移植に適したモデルマウスの作製など、多角的な研究を行う計画である。
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