研究課題
断層活動に伴う摩擦発熱温度を定量的に評価することを目的とし,白亜紀付加体中に発達する巨大分岐断層中の断層岩中に含まれる炭質物および100℃~1300℃まで加熱実験した断層周辺の母岩中の炭質物のラマン分析を行った.加熱実験試料のラマン分析の結果,温度上昇と共に炭質物のラマンスペクトルが大きく変化することが明らかとなった.得られたラマンスペクトルのピーク強度比および面積比の解析を行ったところ,特に,600℃以上の加熱実験において,スペクトルの変化が明瞭に表れることが明らかとなった.また,この変化は,堆積岩が続成作用に伴って経験する被熱温度とラマンスペクトルの関係とは大きく異なることが明らかとなった.次に断層岩のうち,カタクレーサイトのみを産する断層,カタクレーサイトとシュードタキライトを伴う断層を対象に,断層岩中に含まれる炭質物のラマン分析を実施した.その結果,一部のカタクレーサイトでは,700℃,シュードタキライトでは,1300℃まで加熱実験した試料のラマンスペクトルに類似したスペクトルが得られ,瞬間的な発熱によって,断層岩中の炭質物の熟成度が増加していることが明らかとなった.これまでシュードタキライトを産しない断層については,摩擦発熱温度の見積が困難であったが,ラマン分光法を用いることにより,600℃を超える摩擦発熱温度を経験した断層であれば,シュードタキライトが産しなくても摩擦発熱温度の見積りが可能であることが明らかとなった.
すべて 2016
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Geochemistry, Geophysics, Geosystems
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