研究実績の概要 |
心肺停止患者を救命できたとしても社会復帰できるのが約7%と非常に低い値となっている。本研究では、心肺停止患者の社会復帰を促進する新規的脳神経障害根治薬の開発を目指す。心肺停止患者の社会復帰を阻んでいるのは、心肺停止に伴う低酸素によって不可逆的に生じる脳神経障害である。申請者は、心肺停止病態に伴う低酸素によって損傷した神経を障害部位特異的に保護することができれば、脳神経障害の根治に繋がるという着想に至った。本研究では、ナノDDS製剤を切り口として心肺停止患者の神経障害部位である低酸素領域へ選択的に神経保護作用を有する物質を送達する新規的脳神経障害根治薬を開発することを目的とする。
現在、低酸素選択的ナノDDS製剤が低酸素条件下で神経保護作用を示すかを検討するために、神経分化させたPC12細胞を用いたin vitroの系を確立している。 ラット褐色細胞腫PC12細胞に1週間NGFを添加することで神経細胞に分化させた。その神経細胞を低酸素インキュベータを用い1%酸素条件下に3, 6, 12時間暴露させると時間依存的に細胞増殖が抑制されることが明らかとなった(3時間: 61%, 6時間: 54%,12時間: 9%)。以上より、今回確立したin vitroの系は低酸素選択的ナノDDS製剤が低酸素条件下で神経保護作用を示すかをどうか検討するのに有用であると考えられる。今後は心肺停止モデルラットを用いたin vivo の系を確立して、新規脳神経障害改善薬の開発を目指す。
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