研究課題
心肺停止患者を救命できたとしても社会復帰できるのが約7%と非常に低い値となっている。本研究では、心肺停止患者の社会復帰を促進する新規的脳神経障害根治薬の開発を目指す。心肺停止患者の社会復帰を阻んでいるのは、心肺停止に伴う低酸素によって不可逆的に生じる脳神経障害である。申請者は、心肺停止病態に伴う低酸素によって損傷した神経を障害部位特異的に保護することができれば、脳神経障害の根治に繋がるという着想に至った。本研究では、ナノDDS製剤を切り口として心肺停止患者の神経障害部位である低酸素領域へ選択的に神経保護作用を有する物質を送達する新規的脳神経障害根治薬を開発することを目的とする。平成29年度における研究では、低酸素選択的ナノDDS製剤が低酸素条件下で神経保護作用を示すかを検討するために、マウス海馬由来HT22神経細胞を用いたin vitroの系を確立した。HT22神経細胞を低酸素インキュベータを用い1%酸素条件下に3, 6, 12時間暴露させると時間依存的に細胞増殖が抑制されることが明らかとなった(3時間: 100%, 6時間: 70%,12時間: 30%)。さらに、脳保護作用を示すと研究報告があったチオペンタールを、脳神経障害治療薬候補として検討したところ、低酸素条件下における神経細胞死をチオペンタールが有意に抑制することが明らかとなった。以上の結果より、チオペンタールは新規的脳神経障害根治薬となることが期待される。今後はチオペンタールをナノDDS製剤化し、心肺停止モデルラットを用いたin vivo の系で検討することで、新規脳神経障害改善薬の開発を目指す。
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すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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