研究課題/領域番号 |
15K21184
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
野坂 宜之 岡山大学, 大学病院, 医員 (30713961)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフルエンザ / 小児感染症 / 抗体 |
研究実績の概要 |
本研究では、抗HMGB-1(High mobility group box-1)モノクローナル抗体の重症インフルエンザ肺炎に対する治療効果を、マウスモデルを使用して検討した。肺におけるウイルス増殖に差は認めなかったが、対照動物(抗Keyhole Limpet Hemocyanin抗体投与群)と比較し抗HMGB-1モノクローナル抗体投与群では生存率の有意な改善を認めた(p=0.004)。抗HMGB-1モノクローナル抗体投与群では肺炎像の改善を認め、Lung Injury Scoreも有意に低下した(対照群中央値9.5点:抗HMGB-1モノクローナル抗体投与群中央値5.5点, p<0.05)。また、気管支肺胞洗浄液中の好中球数や酸化ストレスマーカー(d-ROMs)、炎症性サイトカイン/ケモカイン(IL-6、TNF-α、CXCL-1)が抗HMGB-1モノクローナル抗体投与群で有意に抑制された。HMGB-1の主要な受容体であるRAGE(receptor for advanced glycation end products)の発現・産生も抗HMGB-1モノクローナル抗体投与群で有意に抑制された。以上の結果より、抗HMGB-1抗体は抗炎症・抗酸化作用によりマウス重症インフルエンザ肺炎を抗ウイルス薬を用いることなく顕著に軽減させ、生存率を向上させることが示された。本剤が重症インフルエンザ肺炎に対する効果的な治療薬になる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文発表に至り一定の結果を出した。
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今後の研究の推進方策 |
学会・論文査読で指摘された下記課題について研究を継続する。 1)副作用調査 2)肺以外の臓器に対する抗HMGB-1モノクローナル抗体の効果 3) 抗HMGB-1モノクローナル抗体投与時期の検討 4) 抗インフルエンザウイルス薬耐性インフルエンザ肺炎モデルにおける抗HMGB-1モノクローナル抗体の効果
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次年度使用額が生じた理由 |
残存試薬で対応できたこと、予定よりも安く試薬を購入したこと、また想定よりも早く結果が出たため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記推進方策に則り、実験を推進する。
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