研究実績の概要 |
1)抗HMGB-1抗体の安全性の検討 昨年度施行した重症インフルエンザ単独肺炎モデルにおける抗HMGB-1(High mobility group box-1)モノクローナル抗体の治療効果検証実験の残血清を用い、血液生化学検査を施行し、対照群と抗HMGB1抗体投与群で比較を行い、安全性を評価した。抗HMGB1抗体投与群で有意な異常所見を呈した生化学検査項目はなかった。 2)抗インフルエンザ薬抵抗性インフルエンザ肺炎モデルにおける抗HMGB1抗体の併用効果 ペラミビル投与(day2, day3の2回, 各10mg/kg)でも50%致死のインフルエンザ肺炎モデルマウスを対照群と抗HMGB-1モノクローナル抗体投与群に分け、day 2, day3, da4に対照抗体または抗HMGB-1モノクローナル抗体をそれぞれ7.5mg/kgずつ尾静脈に投与し、Day28までの生存率を解析した。Day5,7に血漿とBALFを採取し、さらに肺の病理学的解析を施行した。抗HMGB-1抗体投与群で対照群と比較し有意に生存率が高かった。Day5における肺組織中のウイルスコピー数に両群間で有意差は認めなかった。抗HMGB-1抗体投与群で肺組織学的変化が有意に軽症化した。Day5における抗HMGB-1抗体投与群のBALF中TNF-α, G-CSF, KC, MCP1, MIP1a, RANTES 濃度は対照群と比較して有意に低値であった。さらに血清ハイドロペルオキシド濃度は抗HMGB-1抗体投与群では対照群と比較して有意に低値を示した。HMGB-1のアミノ酸配列はマウスとヒトの間で99%相当である。したがって、本研究結果は十分にヒトに応用できると考えられる。抗HMGB-1モノクローナル抗体は重症インフルエンザ肺炎の治療薬として期待できる。
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