小細胞肺癌(SCLC)細胞株であるSBC-3、およびそのシスプラチン(殺細胞性抗癌剤)耐性株であるSBC-3/CDDP(Cancer Sci.2013;104:78-84)を用いて、シスプラチン、PARP阻害剤(オラパリブ)単剤投与の効果ならびにシスプラチン、オラパリブ併用投与の効果を検討した。まず、各薬剤における細胞増殖抑制効果をMTTアッセイ法により算出し、併用効果はcombination indexで評価した。SBC-3における5日間の薬剤持続曝露における50%増殖抑制濃度(IC50)値は、シスプラチン0.97±0.68μM、オラパリブ22.27±5.30μMであり、SBC-3/CDDPにおけるIC50値はシスプラチン5.20±0.79μM、オラパリブ9.80±4.20μMであった。combination indexを用いた評価では、SBC-3/CDDPではオラパリブとシスプラチンの併用療法は相乗効果、SBC-3では拮抗効果が認められた。 また、SBC-3およびSBC-3/CDDPよりDNAを抽出し、次世代シークエンサーによるゲノム塩基配列情報を取得した。網羅的遺伝子解析により、BRACA、BCL2L11、AKT、FGFR、NRG1、CCDC6、ATM、NF1、CHECK2などを含む多数の遺伝子に変異が認められた。臨床検体においても同様の検討を行った。小細胞癌患者における手術検体(治療前)および同一患者のCTガイド下針生検検体(シスプラチンを含む治療後の再発骨転移病巣)よりDNAを抽出し、次世代シークエンサーによるゲノム塩基配列情報を取得した。網羅的遺伝子解析により、MAPK4、MYCNを含む多数の遺伝子に変異が認められ、薬剤耐性機構に関与している可能性が示唆された。
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