本研究は、南北戦争直後の米国にプロイセン首相ビスマルクが接近を試みていたことを示す史料を手掛かりに、独米関係という視角からビスマルク外交を再検討するものである。三年目にして最終年度にあたる本年度は、当初①ドイツでの史料調査、②研究の総括と研究成果の公開を目標に設定していた。
しかしながら、平成28年度の研究実施状況報告書にも記載したように、1867年から独仏戦争(1870~71年)に至るまでのビスマルクの対米政策が、イギリスを巻き込んだ海洋問題(1856年4月のパリ宣言をめぐる問題)と関連していることが平成27年度の史料調査で判明したため、当初の計画を変更して平成28年度にドイツとイギリスで史料調査を行い、当初予定していた米国での史料調査は本年度に行うことになった。
以上の点を踏まえた上で、本年度の研究実績としては(1)米国、イギリス、ドイツでの未公刊史料の収集と(2)研究の総括と研究成果の公開、これら2点にまとめることができる。(1)に関しては、2017年9月にボストンのマサチューセッツ歴史協会とニューヨーク公共図書館を訪問し、当時のベルリン駐在米公使バンクロフト(George Bancroft)の私文書(特に独仏戦争期の独米関係を扱った私信や報告書の草稿)を調査した。そして、そこでの調査結果に基づいて、2017年11月に再度イギリスとドイツにて史料調査を行った。イギリスではキューにあるイギリス国立公文書館にて、ドイツではベルリンにあるドイツ連邦文書館およびプロイセン枢密文書館にて、独仏戦争期の独米関係および海洋問題に絡む文書を調査して、史料収集に努めた。(2)に関しては、これまでの研究成果をまとめたものを2017年10月29日(日)に2017年度広島史学研究会大会の西洋史部会にて「独仏戦争時のビスマルク外交とアメリカ合衆国――海洋問題の視角から」と題して研究報告を行った。
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