本研究は、ビスマルクの外交政策を独米関係の視角から再検討するものである。ルクセンブルク危機(1867年)から独仏戦争(1870-1871年)までの間に、彼は南北戦争直後の米国に接近を試みていた。本研究を通じて、(1)彼の狙いが反仏的な同盟を米国と結ぶことではなく、米国で軍艦を調達、あるいは当時の国際海洋法であった1856年4月の「パリ宣言」の改定を提起して米国との連携を図ることにあったこと、(2)その背景には独仏間の著しい海軍力の差と、グローバルに展開するドイツ商船を保護する必要に彼が迫られていたこと、(3)それ故に彼は独仏戦争中終始親米的姿勢を維持したこと、これら3点が明らかとなった。
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