研究課題
本年度は研究計画に従い「既にブレオマイシンの投与を受けた (プライムされたと表現する)マウス骨髄」および「ブレオマイシン未投与の (プライムされていない)マウス骨髄」をドナー細胞として用いた骨髄移植モデルを作成し,双方のレシピエントマウスにさらにブレオマイシン肺障害を誘導して表現型を比較検討した (それぞれ「プライム群」「対照群」とする).我々は既に「プライム群」にブレオマイシン肺障害を誘導すると,「対照群」と比較して肺障害が増悪することを確認している.我々は気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞の比較検討を行うことで,「プライム群」で「対照群」と比較し,免疫制御に関わる分子であるB7Hファミリーのうち,B7H1およびB7H2発現には差がないが,B7H3陽性細胞が有意に増加することを見出した.さらに「プライム群」では「対照群」と比較して,気管支肺胞洗浄液のみならず,肺組織において線維化に関わるTGFβおよびTh2系サイトカインであるIL-4,IL-13と共にB7H3のmRNA発現が有意に亢進していることが確認された.さらにプライムされた骨髄および対照群骨髄から単球系細胞のみをMACSシステムによりソーティング採取し,通常の骨髄移植の際に骨髄細胞と共に移植することで,「プライム群」と同様にレシピエントマウスにおける肺障害が増悪すること,プライムされた骨髄から得られた造血幹細胞のみでは同様の増悪の表現型が再現できないことを見出した.これにより,骨髄における未分化な造血幹細胞~造血前駆細胞でなく,より分化した単球系細胞にブレオマイシン投与を受けた情報が保存されているものと理解された.
2: おおむね順調に進展している
プライム群および対照群の差異の鍵となる分子を見出すことは困難であると予想されていたが,比較的早い段階で差異を示すマーカー分子の候補を発見できたことは予想以上の成果であると考えている.
我々は既に「同一個体内において傷害を記憶した細胞が存在していること」を明らかにする系として同一個体に期間を空けて2度のブレオマイシン投与を行う「2hitモデル」を確立している.この系を用いて,B7H3蛋白が前述の骨髄移植における「プライム群」と同様に変化を示すかを確認する。プレリミナリーな検討では本分子が「2hitモデル」の系においても変動していることが確認されており,B7H3ノックアウトマウスを用いて,本分子の役割をさらに追及できるよう準備を進めている.以上の結果をまとめ論文化を目指してゆく予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
PLoS one
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