研究課題/領域番号 |
15K21191
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
梶本 剛 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70633759)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軽フラグメント生成 / 重粒子 / 二重微分断面積 |
研究実績の概要 |
重粒子線を用いたガン治療では正確な線量評価が不可欠である。これまでは重粒子のみの線量評価だが、重粒子と生体物質との核反応から生成されるフラグメントも付加的な線量を与える。そのため、付加的な線量も計算できる評価手法開発が望まれている。開発には検証のための重粒子入射フラグメント生成断面積が必要である。本研究では、生成量の多い軽フラグメントに着目し、重粒子入射軽フラグメント生成断面積を測定する検出器を開発、断面積の測定を目的としている。 また、測定したデータを提供することにより重粒子線治療の線量計算だけでなく、宇宙飛行士の銀河放射線による線量計算の精度向上に貢献できる。 今年度は、計算コードを用いて軽フラグメントを測定するための検出器の開発、開発した検出器について粒子弁別能およびエネルギー決定の妥当性を実験によって確認した。開発では、検出器に使用する無機シンチレータの種類と厚さ、断面積測定時の標的・検出器間距離を決定した。開発する検出器は、上流からアクティブコリメータ、ベトシンチレータ、EJ-299-34シンチレータ、BGOシンチレータ、ベトシンチレータの並びとした。また、計算コードを用いて測定可能最大エネルギーを決定した。妥当性確認実験では、重粒子を炭素に照射し生成される軽フラグメントを開発した検出器で測定した。データ解析の結果、粒子弁別能の評価では、エネルギー飛行時間法およびデルタE-E手法による弁別能を比較し、エネルギー飛行時間法が高い弁別能を持つことが確認された。エネルギーの決定については、時間基準となる即発ガンマ線の半値幅が1 ns以下であったことから十分なエネルギー分解能が得られたことから、断面積測定時は飛行時間法によってエネルギーを決定することにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた検出器開発、開発した検出器の粒子弁別能およびエネルギー決定方法の妥当性確認は、概ね終了したことから順調に進んでいると判断する。妥当性確認では、実験により軽フラグメントを測定したことで、バックグラウンドの影響も確認することができたことから実際の断面積測定時に必要な測定時間の目安が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
開発した検出器の効率を測定し、重粒子入射軽フラグメント生成二重微分断面積を測定する。得られた実験値を、物理モデルを用いて計算した値と比較・検討を実施する。効率測定では、加速器からの陽子を検出器に入射させることで、陽子検出効率を測定する。解析によって全エネルギー付与事象のみを抽出し、効率を求める。得られた効率を計算コードによる計算値し、一致しないようであれば、計算コードを改良する。断面積測定では、軽フラグメント放出角に関して系統性が得られるように検出器の設置角度を変えた測定を実施する。得られたデータの解析方法を確立し、断面積を導出する。得られた実験値は複数の物理モデルと比較・検討を行う。
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