研究課題/領域番号 |
15K21193
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
佐村 俊和 山口大学, 創成科学研究科, 助教 (30566617)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海馬 / 時系列記憶 / シータ進行波 / 神経活動伝播 / リカレントネットワーク / ギャップ結合 |
研究実績の概要 |
本研究では,記憶を担う脳の海馬CA3,CA1領域における,シータ進行波に基づく行動の時系列を時空間的に表現し時系列記憶形成を可能とする神経機構を明らかにすることを目的としている.これまでの研究で,海馬CA3領域を模すリカレントネットワーク内の抑制性介在細胞間にギャップ結合を導入することで,整った自己組織伝播の生成と入力依存伝播の生成の両立が可能であることが分かっている.その際の神経活動を詳細に解析し,錐体細胞と抑制性介在細胞の神経活動間隔の分布を求めると,シータ周期における抑制性介在細胞の活動間隔は,錐体細胞の活動より短いことが分かった.また,抑制性介在細胞間のギャップ結合を除いたネットワークで,同様の伝播生成の両立を実現するためには,錐体細胞と抑制性介在細胞間に強化された相互結合が必要なことが明らかとなった.この強い相互結合は,抑制性介在細胞の活動を増幅させ,その影響度も増幅させることになるが,ギャップ結合を導入したネットワークと同様の神経活動間隔の分布を再現する.つまり,このような分布の実現が,2つの伝播生成の両立させていることが分かった.一方,ギャップ結合を導入したネットワークにおいて,抑制性介在細胞の神経活動は低く抑えられており,ギャップ結合は効率的に抑制を機能させていることを示唆する結果である.また,海馬の神経活動との対応を図るため,海馬内を伝播することが報告されている鋭波リップ中の神経活動を調査し,動物が行う課題に関連する神経細胞の鋭波リップル中の神経活動を明らかとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,自己組織伝播の生成と入力依存伝播の生成の両立を可能とする詳細な神経機構の解明に焦点を当て、両立するために必要となる錐体細胞と抑制性介在細胞の神経活動間隔の分布における関係性を明らかにした.また,神経活動伝播の生成において効率的に抑制を機能させる役割をギャップ結合が担うことを示す結果を得ており,両立を可能とする詳細な海馬CA3における神経機構の調査に関して,ほぼ計画通りに研究が進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度では,本年度の成果に基づき,時系列記憶形成を可能とする海馬CA3,CA1領域にまたがる神経機構の解明に向け,海馬CA1を含むモデル構築を行う.また,新たに明らかとなったギャップ結合における効率的な抑制を実現する機能を含む,詳細な海馬CA3における神経活動伝播に関する神経機構についても調査を行う予定である.
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