研究実績の概要 |
1秒以下の時間に対する処理を小脳右半球が行っているという仮説に基づき,経頭蓋直流電気刺激 (tDCS) を用いた実験を行った。tDCSは頭皮上に微弱な直流電気 (本実験では2 mA) を流すことで直下の脳部位の興奮性を変化させる非侵襲的脳刺激法である。陽極では興奮性が増加し,陰極では低下すると考えられている。2つの音が順に提示された後,実験参加者は2音の間の時間間隔をタッピングにより再現した。2音間の時間間隔は500,1000,1500 msのいずれかであった。この課題の最中に,tDCSの陽極もしくは陰極で小脳右半球を刺激した (昨年度から手続きを見直し,課題の前に刺激を行うことで予め興奮性を調整するのではなく,課題中に刺激を行うことで効果の向上を狙った)。tDCSを行っていないときと比べて,tDCSを行ったときでは1000 ms以下の時間間隔に対する再生のばらつきに影響が生じると予想される。具体的には,陽極刺激を行ったときではばらつきが減少し,陰極刺激を行った時ではばらつきが増加すると予想される。この検証を目的として,現在,データの解析を進めている。 また,もう一つの非侵襲的脳刺激法である経頭蓋交流電気刺激 (tACS) を用いた研究では,20 Hzの交流電気刺激で運動野を刺激すると,経頭蓋磁気刺激 (TMS) による筋電位振幅が上昇し,さらにこの効果は交流電気の90°の位相のときのみに観測されるという位相選択性が明らかになった (Nakazono, Ogata, Kuroda, & Tobimatsu, 2016, Plos One)。
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