従来のプライバシーを侵害せずに人物状態を検知できる輝度分布センサシステムは、直立や転倒といった各人物状態を判別するための閾値は固定であり、使用する環境が同一であっても、対象者ごとに状態判別の閾値を手動で設定する必要があった。また、対象者の奥行き方向の移動について考慮していなかったため、輝度分布から得られる特徴量の形状や再構成した画像が対象の大きさや位置を正しく表現できていなかった。そのため、対象物までの奥行きが異なると状態判別が正しく行われないことや、再構成した画像がどのような状態か把握できないといった問題があった。 これらの問題を解決するために本研究では、奥行き情報を取得可能な手法を提案し、より実用的で頑健な人物の状態検知が可能なセンシングシステムの実現を目標としている。昨年度までの研究では、輝度分布センサを用いた距離測定法として、ステレオ法を応用した方法と、透視図法を応用した2つの方法を提案した。さらに、輝度分布の重心位置の変化を利用した状態判別の自動閾値設定法も提案し良好な成果が得られた。 本年度は、これらの手法を組み合わせた人物の奥行き距離によらない状態検知が可能なセンシングシステムに関する研究開発を行った。この状態検知法では、距離測定法から得られる輝度分布センサと対象物間の距離情報に応じて自動閾値設定法の閾値の制御を行う。その結果、輝度分布に対して測定対象が水平方向に移動した場合だけでなく、奥行き方向に移動した場合も正しく状態判別可能となった。
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