研究課題
研究の目的と重要性:心不全はいまだ難治性疾患であり、その発症・進展には様々な機序に起因する心臓リモデリングが関与している。1999年に新たに同定されたInslin-like peptide 6(INSL6)は、INSULIN/IGF/RELAXINスーパーファミリーに属するペプチドホルモンであり、同じファミリーに属するリラキシン2は急性心不全治療薬として臨床試験が進行中である。しかしながら、INSL6の作用はいまだほとんどわかっておらず、特に心臓における作用に関しては研究がなされていない現状にあった。本研究では、マウスを用いて、心不全に深く関与する心臓リモデリングにINSL6が関与するか否かを明らかにし、その心臓における分子機序を解明し、新しい治療ターゲットの可能性について検討した。研究成果:INSL6欠損(KO)および過剰発現(TG)マウスを用い、アンジオテンシンII刺激による心臓リモデリングを作成した。野生型マウスにおいて、アンジオテンシンII刺激後に心臓でのINSL6の発現は軽度亢進した。通常状態では、INSL6 KOマウスと野生型マウスの心臓形態に差はなく、アンジオテンシンII刺激後のINSL6 KOマウスは、野生型マウスと比較して有意に心機能が低下し、心筋線維化が増悪した。MCK INSL6 TGマウスにおいては、通常状態でもアンジオテンシンII刺激後でも野生型と比較して心機能に明らかな有意差を認めなかった。しかしながら、野生型マウスにアデノウイルスを用いてINSL6を過剰発現したマウスを作成し、アンジオテンシンII負荷を行うと、コントロールに比較して、INSL6過剰発現群は心筋線維化が減弱し、心機能の低下が抑制された。以上の結果より、INSL6はアンジオテンシンII過剰によって引き起こされる心筋線維化、心機能低下を抑制する作用を有することが明らかとなった。
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巻: 55 ページ: 3623-3626
10.2169/internalmedicine.55.7359