研究課題/領域番号 |
15K21202
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
佐藤 敬子 香川大学, 工学部, 助教 (30647889)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 視覚 / 味覚 / 感覚間相互作用 / 認知閾値 |
研究実績の概要 |
本課題では、視覚と味覚の感覚間相互作用に着目し、味溶液の見た目を変える(着色する)ことが、味覚にどのような影響を与えるのか、基本味について明らかにすることを目的とする。特に、従来の実験手法として用いられてきた食用色素での着色ではなく、LED照明によって味溶液を疑似的に着色する実験システムを用いることで、多様な色での着色が容易になるとともに、実験参加者が味からイメージする色に着色して実験を行う、ボトムアップ的検証も可能となる。 これまで、視覚が味覚に及ぼす影響に関しての研究報告の中では、実際の味と味からイメージする色彩が一致すれば閾値の低下(低い濃度の味溶液でも味の検知や認知ができる)がおこるとされる。平成27年度は、上記に関する検証の一部として、塩味と甘味を対象として研究を行った。 塩味においては、塩味をイメージする色として、青と黄に塩味溶液を着色したものと無色溶液を用意し、実験参加者20名に対して2肢強制選択法により味の強度評定を行ってもらった。その結果、認知閾値(人が味を感じ、その味の種類を判断できる最小の濃度)の低下は確認されず、特に黄で着色した溶液に対する判断にばらつきが見られた。 次に甘味では、甘味をイメージする色として赤、ピンク、甘味をイメージしない色として青、緑の4種により着色したものと無色溶液を使って、同様に20名に対して評定させた。その結果、無色に比べピンクの認知閾値は低下し、反対に赤、青、緑は上昇した。さらにアンケート調査により、甘味をイメージする色としてピンクと答えた参加者10名分の認知閾値を算出したところ、その値は大きく低下した。このことから、甘味の認知閾値に関しては、甘味をイメージする色により着色することにより、閾値は低下することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度前半の実験計画に挙げていた、「色が味覚に与える影響についてのトップダウン的検証」、及び、28年度前半の課題としていた「色が味覚に与える影響についてのボトムアップ的検証」については、塩味と甘味を対象に実験と分析を終了しており、順調に進んでいる。塩味に対する実験及び分析結果の発表については一度学会発表を行っている。甘味については今後学会発表1件、論文執筆1件を予定している。また、本課題は認知閾値に対する実験を想定していたが、検知閾値についても考慮が必要と考え、同時進行で実験を行った。ただ、甘味の検知においては、甘味からイメージされる色、されない色を用いても検知閾値の上昇、低下には直接的な影響がない可能性が示されたため、今後は認知閾値に絞って実験を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、引き続き、また実験を行っていない酸味と苦味について進める。その結果に基づき、色と味覚の連合がどの基本味についておこるのかについての解明を目指していく予定である。基本的には研究実施計画に基づいて進めるが、本課題の特色である、LED照明による疑似的な着色が可能な利点をいかして、より興味深い知見が得られるような実験手法を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、主な物品購入費として色彩輝度計(約80万)の購入及び主な出張費として外国旅費の支出がなかったため、次年度での使用額が生じた。購入予定の色彩輝度計がリニューアルされ、選定に時間がかかったためである。なお、当該年度の実験では、代用機を用いて色刺激の測定を行った。平成28年度初旬に、当初の予定通り色彩輝度計を購入する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度においては、当初の予定通り色彩輝度計の購入にあてる。また、国際会議発表については、1件を予定しており、また、国際論文執筆にかかる費用として英文校正費、掲載費等に充てる予定である。
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