本課題では、視覚と味覚の感覚間相互作用に着目し、味溶液を着色することが味覚にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とした。特に、食用色素による着色手法に代わり、LEDによって溶液を擬似的に着色するシステムを用いることで、色と味覚の連合について調べるとともに、連合から生じる色による味覚の促進効果について調べた。 平成27年度は、甘味と塩味を対象とした。塩味では、イメージする色として青と黄に着色した溶液と無色溶液の3条件で、参加者20名に対して認知閾値(味の種類を判断できる最小の濃度)を調べた。その結果、閾値の低下(味の促進効果)は確認されなかった。甘味では、イメージする色として赤とピンク、イメージしない色として青と緑に着色した溶液と無色溶液の5条件で、同様に評定させた。その結果、無色に比べ、ピンクの閾値は低下し、反対に赤、青、緑は上昇した。甘味に関しては、甘味をイメージする色で着色することにより味の促進効果が確認された。 平成28年度は、味からイメージする色の調査と実験を行った。調査では、43名に対して色彩が持つ味のイメージについてアンケート調査を実施し、味からイメージする色とイメージしない色を決定した。その結果、甘味はオレンジと青、酸味は黄色と緑、苦味は緑とオレンジとなり、これに無色を加えた条件で、参加者15名に対して一対比較法による味強度評価実験を行った。その結果、甘味の場合、青と無色よりも、オレンジの方が味強度は高くなった。酸味では、黄色が、緑及び無色よりも低くなった。また、苦味については、色彩の影響は見られなかった。 2年間の研究の結果、着色される色によって味強度に対する影響は異なることが示された。特に甘味ではその影響が強い結果となった一方で、塩味、酸味、苦味では、味からイメージする色の回答にばらつきがあり、また着色による影響も個人によって異なるものとなった。
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