研究課題/領域番号 |
15K21203
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
瀧 久範 関西学院大学, 法学部, 准教授 (40508636)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不当利得 / 租税還付請求権 / 過誤還付金返還請求権 / 債権譲渡 / 振込 / 利得消滅 |
研究実績の概要 |
本年度も引き続き、租税還付請求権が譲渡または質入れされ、税務署による譲受人または債権質権者への支払後にその不存在が判明した場合について、とくに1995年改正法以降の判例および学説の整理を行った。 同改正以前は、譲渡債権が私法上のものである場合との比較が議論の中心であり、私法上の場合と異なり、譲受人に対する請求権を認める判例を支持する立場が優勢であったが、同改正以降は、税務署が譲受人/債権質権者だけでなく、譲渡人/質権設定者に対しても返還請求権を有することになったことから(ドイツ公課法37条2項3文)、逆に例外的に譲受人に対する請求権が認められない場合に関する検討が行われていることが分かった。 その分析から、この問題では、税務署が返還請求権の相手方から過誤還付金を回収できなくなることは、国民一般がその損失を被ることになるので、請求の相手方を広く把握したうえで、これらの者を連帯債務者とすべきとする価値評価に基づいて規範が形成されていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過誤還付金返還請求権に関するドイツにおける判例はほぼ整理できたが、私的な決済に振込が用いられる場合について、EU支払サービス指令が改定され、かつ、連邦通常裁判所において従前と異なる判決が下されたために、新たな議論が生じていることから、振込事例について十分な分析ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の分析から、ドイツ法では、税法上の不当利得返還請求権について、その当事者(税務署の相手方)および範囲について、税務署が返還請求権の相手方から過誤還付金を回収できなくなることによる国民一般の損失を回避するという価値評価が作用していることを析出できたので、この価値評価が日本法においてどのように作用するのかを検討したうで、平成29年度には論文として公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月に本務校を移籍したため、研究環境の整備及び授業の準備のため研究時間を十分に確保することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
資料の収集、および、行政法・税法の研究者との意見交換のための旅費に使用する予定である。
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