最終年度は、大都市向けの温帯野菜作の拡大が進む西ジャワ州プリアンガン高地畑作農村、スンテンジャヤ村において、2017年9月に、60世帯の農家を対象とした農地の所有経営状況および自然資源の管理状況、農業による自然資源への影響に関する現地調査を実施した。また、追加調査として2018年3月に、上記農村において農民グループの代表者を対象とした聞き取り調査を実施した。 その結果、野菜作の新規参入は、地元住民による非農業部門からの転職が多くの割合を占めている一方、農業技術指導や農地および農業用水の管理体制が整っておらず、傾斜地において、通年にわたる集約的な野菜作が無秩序に行われている事が明らかとなった。このような状況は、農家自身も認識しており、2009年には、一部の農家により水資源保護と収入確保の両立を目指したグループが結成され、コーヒーなどの樹木作物と野菜の混作などが導入されていた。また、野菜作と比較して安定的に所得が得られる酪農に参入する農家もみられることが明らかとなった。 研究期間全体を通して、長期にわたる経済成長により農業の多様化や高齢化等が進むジャワ農村では、従来の自然資源管理体制が通用しなくなる一方、農地の経営主体が不在地主であっても、地元住民であっても、農業経営主体および土地所有者の所得拡大が優先され、新たな自然資源管理体制の構築には至っていない事が明らかとなった。この背景には、農協のような地域の農業を統制する機関や農業経営主体による圧力団体等がほとんどみられない事があるものと推察された。このような成果は、農業就業人口が減少局面に入った発展途上国では、農業の維持に加え、変動する農業や土地利用に応じた自然資源管理体制の構築が重要であることを実証的に明らかにした点で意義がある。 以上のような研究成果は、国内学会およびパジャジャラン大学における成果報告会にて発表された。
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