研究課題/領域番号 |
15K21208
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
王 胖胖 九州大学, 分子システムデバイス国際リーダー教育センター, 助教 (50592010)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 仕事関数 / プラズモン共鳴 / 双極子モーメント / ケルビンプローブフォース顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本研究では、ナノ空間分解能を持つケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)を用いてプラズモン共鳴による金属ナノ粒子の仕事関数の変化を定量的に測定し、ナノ界面の電子構造とプラズモンとの関係を解明を目指している。平成27年度の研究実績は以下のとおりである。 (1)銀ナノ粒子の被覆有機分子のミリスチン酸(My)をオクタンチオール(SC8)に置換し、ナノ粒子の仕事関数の制御(約200meVの変化量)が成功した。仕事関数変化のメカニズムについて、ミリスチン酸とオクタンチオールと銀表面の結合部分(COO-AgとS-Ag)の双極子モーメントに依存することが確認した。 (2)マイカ基板上に成長した金薄膜を後熱処理し、Template-Stripping法によりオングストロームスケール平坦な金基板の作製を成功した。 (3)単層銀ナノ粒子シートを直径2.5μmの孔の上に置くことができた。この自立的な単層銀ナノ粒子シートの力学特性を原子間力顕微鏡のナノインデンテーション手法によって測定し、シートのヤング率を算出した。自立シートが現れた強い機械強度はナノ粒子の被覆有機分子の相互作用に依存し、そののメカニズムを解明する必要がある。 (4)FDTDシミュレーションによる異なる被覆有機分子を持つ銀ナノ粒子のプラズモオン共鳴波長と実験結果を比較した。 上記研究で得られた成果は、学術論文に1報、国際会議1件、国内学会1件発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)金属ナノ粒子の仕事関数は被覆分子に依存することを確認した。従来の研究と違い、本研究では被覆有機分子の外側(機能性官能基)ではなく、分子と基板の結合部分(COO-AgとS-Ag)に大きく依存することを証明した。この研究による、疎(親)水性を保ったまま、異なる仕事関数を持つ金属ナノ粒子の作製することができる。 (2)後熱処理で、Templat-Stripping法による原子レベル平坦な金基板を作製し、 原子間力顕微鏡を用いてAu(111)面を確認した。この基板を利用し、平坦な金属ナノ粒子シートを作製することができ、従来ラフネスがある金基板より、仕事関数の測定をもっと正確に測定することができる。 (3)銀ナノ粒子シートを自立させ、自立シートの作製が成功した。このシートをモデルとして使い、ナノ材料の力学特性を解明することができると考える。 研究はほぼ順調ですが、残念ながら平成27年度終わりまで、現有AFMシステムの改造が完成できなく、来年度以降にする予定になった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、昨年度に得られた成果より、さらに一層上の研究を進めたいと思っております。具体的な研究計画を以下のとおりです。 (1)AFMシステム改造を完成する。改造内容は窒素導入とレーザー導入である。新たなシステムを用いて、プラズモン共鳴を励起しながら正確な仕事関数測定することを行う。 (2)自立シートの機械特性の測定結果によって、プラズモン励起とシートの機械強度の関連性にも検討する。 (3)チャレンジでスピロピラン光異性化分子を用いて、プラズモン共鳴とRabi Splitting効果との関連性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現有AFMシステム改造(窒素導入およびレーザー光導入)は、H27年度内は完成しておりませんでした。現有AFMシステムは外部音波の影響をカットするため、特殊なカバーとフィルターが使っており、AFM製造会社にてもこのような改造は初めてですので、改造方法の検討した。改造部分の予算を次年度で使う予定があります。
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次年度使用額の使用計画 |
窒素導入システムは約20万円程度、レーザーの購入と導入は約60万円程度を利用する予定です。
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