研究課題/領域番号 |
15K21212
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 和広 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (40455449)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ナノファイバー / センシング / 光ファイバー / プラズモン |
研究実績の概要 |
本研究では光ファイバーセンサーの微小化、集積化および高機能化を目指し、コア径を光波長以下としたナノファイバーを基板上集積する新規技術を発展させ、多点多機能センシングを実現することを目的とする。平成28年度の計画は、前年度で作成条件を検討したナノファイバー構造において目標である異種媒質の検出を屈折率の違いにより検出することを目的とした。前年度の結果から単純なナノファイバー構造では、目標とする検出感度すなわち異種媒質存在下での透過光強度の比が大きく(20dB程度)できないことが予想された。そのためナノファイバー内に周期開口列を集束イオンビーム(FIB)を用いて形成し、フォトニック結晶構造とすること、および金属ナノ粒子列を導入することで表面プラズモンによるナノファイバー内のモード制御を行うこと、の2つの手法について数値計算、デバイス作製を試みた。 その際使用する光ファイバーの変更に伴い、コア径(2ミクロンから5ミクロン)およびコアとクラッドの組成が従来から変化したため、FIB加工条件および緩衝フッ酸溶液(BHF)によるウェットエッチング条件の探索を再度実施し、ナノファイバーの作成に成功した。 ナノファイバーの形状変化のためフォトニック結晶構造およびプラズモン構造についても再度数値計算により最適構造を設計した。 また申請者独自の光ファイバー加工技術である、光ファイバー端面へのプラズモン構造の導入法(透過スペクトル制御、伝搬モード制御)を本研究課題に援用し感度向上の可能性を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の目標は、申請者が開発したナノファイバー技術により高感度、多点でのセンシング機能を実証することであった。しかしながら前年度使用していた光ファイバーが生産中止となり、代替光ファイバーの加工条件の決定、評価に時間を要した。また感度向上のための金属ナノ粒子によるプラズモン構造の導入を検討したが、構造作製に適した金属スパッタ装置の導入、立ち上げに時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
新規光ファイバーの加工条件は決定したため、速やかに多点多機能ナノファイバーでのセンシング実証を行う。また感度向上のためのナノ構造(開口列、金属ナノ粒子列)導入ナノファイバーデバイスを作製し、モード変換および共振器構造の有効性を実証する。 さらに平成28年度から検討を行ったナノファイバー以外の独自の光ファイバー加工法をさらに適用して、目標感度および新規機能の実現を図る。具体的には光ファイバー端面構造によるモードおよび透過スペクトルの変化を利用したセンシング手法を確立する。また金属テーパー構造においては顕著な電界増強が生じることを示しており、電界増強による2光子励起発光、蛍光増強を利用するセンシング手法を引き続き検討する。 本研究課題のこれまでの結果についてはすでに論文作成中であり、速やかに発表するとともに、光センシング応用だけでなく光のスピン相互作用に関する基礎研究や量子光学応用への展開等を国内外の学会発表で議論する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に本課題で使用する光ファイバーの生産中止が明らかとなり、平成28年度には別製品でのデバイス作製に着手したが、ファイバー形状および加工条件の変化のために所望のデバイス特性を実現する構造探索に予定より時間を要した。またデバイス構造について更なる性能向上を図れる金属導入構造の作製に着手したが、金属導入のための真空装置の導入が年度末となったため、本課題での成果の論文発表も含め次年度への予算の繰越が必要だと判断した。
|
次年度使用額の使用計画 |
速やかに新規光ファイバーでの結果をまとめ、論文発表を行う。また金属導入構造の作製を行うための加工のための旅費およびその研究発表(学会、論文発表)に予算を使用する。
|