本研究の目的は、考古学的分析手法による型式学的検討と地球科学的分析手法による胎土分析を併用することで、地域社会の形成基盤となる交流の実態を検討し、弥生時代における社会複雑化過程を明らかにすることである。特に、北部九州地域の弥生時代中後期を対象に、葬送行為にともなう土器移動現象の把握と社会変化の関係を検討している。 平成29年度は、前年度に引き続き胎土分析に着手する前段階の考古学的データ収集・整理を行うとともに、対象遺跡の土器観察や型式学的検討などの情報整理を進めた。また、土器の型式学的検討を踏まえた胎土分析資料のサンプリングも継続して行った。本年度は特に、埋葬専用土器である大型専用甕棺のサンプリングを進めた。分析を終えていない資料に関しては、今後胎土分析を実施予定である。 葬送儀礼で使用された赤彩土器と無塗彩の日常土器を分析した結果、原材料の点では両者は明確に区分できないこと、むしろ土器製作時の丁寧度(器種、塗彩、文様、胎土調整)の点で両者の差別化が図られていること、在地で製作された土器が多数を占めるが搬入された可能性のある資料が少数存在することが分かった。しかしながら現時点では分析資料数が少ないため、時期差や地域差、集落の性格などを考慮したさらなる検討が今後必要である。 研究成果については、関連分野の研究者との議論を通じて、分析方法やデータ解析方法の改善および洗練化を進めている。
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